最新記事

抗体

「回復した人の3割が十分な抗体を持たず」と中国の研究結果:新型コロナウイルス

2020年4月13日(月)16時50分
松岡由希子

今後、さらに解明していく必要があるが...... REUTERS/Axel Schmidt

<中国の復旦大学の研究チームは、軽度の新型コロナウイルス感染症から回復した175名を分析し、被験者の約30%は抗体レベルが極めて低いことがわかった......>

獲得免疫とは、病原体固有の免疫的な記憶を獲得することで生体を防御する働きであり、病原体に対抗するためのタンパク質、すなわち「抗体」が重要な役割を担う。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)から回復した人はその原因ウイルスである新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の免疫を獲得していると推定されるが、感染後、どのように免疫を獲得するのか、どれくらいの期間、免疫が持続するのかなど、解明されていないことも多い。

被験者の約30%は抗体レベルが極めて低かった

中国の復旦大学の研究チームは、2020年2月26時点で軽度の新型コロナウイルス感染症から回復し、上海公衆衛生臨床センターから退院した175名の血漿を採取。新型コロナウイルスに対する中和抗体(NAb:ウイルス感染阻止能を有する抗体)のレベルなどを分析し、4月6日、その結果をまとめた未査読の研究論文を医学分野の査読前論文プラットフォーム「メドアーカイブ」で公開した。

これによると、新型コロナウイルス感染症の発症後、10日から15日経過すると、新型コロナウイルスに固有の中和抗体が認められ、これが持続する。

しかしながら、被験者の約30%は抗体レベルが極めて低く、そのうち10名はその抗体力価が検出可能な最低レベルを下回っていた。また、高齢であるほど抗体レベルが高い傾向があり、60歳から85歳の被験者は、15歳から39歳までの被験者よりも、抗体力価が3倍高かった。

回復した人が再び陽性となる症例が複数確認されている

新型コロナウイルス感染症から回復した人が再び陽性となる症例が、すでにいくつも確認されている。韓国疾病予防管理局(KCDC)では、4月10日、新型コロナウイルス感染症から回復して退院した91名が検査で陽性を示したことについて調査をすすめていることを明らかにした。同様の症例は、日本でも、大阪府北海道で確認されている。

研究論文では、一連の分析結果をふまえ、「抗体レベルの低い人が新型コロナウイルスに再感染するリスクがあるのかどうか、今後、さらに解明していく必要がある」と指摘している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

貿易収支5月は6376億円の赤字、自動車不振で対米

ビジネス

フェラーリ、EVモデル第2弾の投入延期 需要低調で

ワールド

米通信当局、中国移動に罰金警告 調査に協力せず

ワールド

G7、ウクライナ巡る共同声明見送り ゼレンスキー氏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中