最新記事

感染症

人との接触回避は2022年まで必要かもしれない

Coronavirus Social Distancing Could Last Into 2022, Harvard Study Finds

2020年4月16日(木)16時30分
ベンジャミン・フィアナウ

接触回避のため間を空けて並ぶ買い物客(米バージニア州、3月31日)

<パンデミックの収束後も冬期に再流行のおそれは残るため医療崩壊を防ぐためには警戒を続ける必要があると指摘>

新型コロナウイルスの季節的な流行による将来の医療崩壊を防ぐためには、2022年まで断続的にソーシャル・ディスタンシング(社会的距離の確保)を行う必要があるかもしれない――。米ハーバード大学の研究チームが4月14日、科学誌サイエンスに発表した研究論文で、こんな予測を明らかにした。

ハーバード大学公衆衛生学大学院の研究者たちは、同ウイルスの感染者数の増加がアメリカの医療体制をひっ迫させる可能性について、複数のシナリオを分析。一度感染した人が獲得する免疫が短期的(1年程度)なものだった場合と、より長期的なものだった場合の両方を考慮に入れた上で、検証を行った。

その結果、新型コロナウイルスは2020年春の「最も深刻な」流行に続いて、冬にも「おそらく」流行するとの予測を発表。この第2波が訪れた場合、現在の救急医療態勢では対応しきれず、十分な治療が提供できなくなる可能性があるとの見解を明らかにした。

冬におそらく再流行

研究チームは、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)のパンデミック(世界的な大流行)が、アメリカをはじめ世界の経済に大きな打撃をもたらしていることを認め、今回の研究報告は「医療体制に壊滅的な負荷がかかる」のを防ぐための、代替策の可能性を探るためのものだと説明した。

彼らは研究報告の中で、「その他の介入が行われなかった場合、感染者数を救命救急診療の対応の限界内にとどめられるかどうかは、ソーシャル・ディスタンシングで決まる」と説明。「医療崩壊を防ぐためには、ソーシャル・ディスタンシングを2022年まで延長する、あるいは断続的に実施する必要があるかもしれない」と指摘した。

さらに彼らは、「新型コロナウイルスは初期の最も深刻なパンデミックが終わった後、おそらく冬に再び流行するだろうと予測する」と続けた。「救急診療態勢の拡充や効果的な治療法の開発などの追加的な介入が行われれば、断続的なソーシャル・ディスタンシングがより効果を発揮し、多くの人が十分な免疫を獲得する(集団免疫がつく)時期が早まるだろう。流行の封じ込めに成功したように見えても、2024年までは再流行の可能性があるため、警戒を緩めるべきではない」

研究チームは、ウイルスの致死率が低いままでいてくれれば制圧も可能と指摘しつつ、「中国、イタリアとアメリカの経験は、COVID-19が十分に資源のある国の医療体制さえも崩壊させかねないことを示している」とし警告した。

202003NWmedicalMook-cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

SPECIAL EDITION「世界の最新医療2020」が好評発売中。がんから新型肺炎まで、医療の現場はここまで進化した――。免疫、放射線療法、不妊治療、ロボット医療、糖尿病、うつ、認知症、言語障害、薬、緩和ケア......医療の最前線をレポート。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

デギンドスECB副総裁、利下げ継続に楽観的

ワールド

OPECプラス8カ国が3日会合、前倒しで開催 6月

ワールド

トランプ政権、予算教書を公表 国防以外で1630億

ワールド

ロ凍結資金30億ユーロ、投資家に分配計画 ユーロク
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 4
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 5
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 6
    宇宙からしか見えない日食、NASAの観測衛星が撮影に…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    金を爆買いする中国のアメリカ離れ
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中