最新記事

事件

韓国激震 常軌を逸した極悪わいせつ動画SNS「N番ルーム」事件の闇

2020年3月24日(火)16時30分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

newsweek_20200324_123740.jpg

「N番ルーム」は最大8つのわいせつ動画のトークルームが開設されていたことから付けられた名称だ TV CHOSUN / YouTube

文在寅も警察に参加者全員の徹底調査を指示

韓国では、国民が政府にオンラインで直接意見や提案をすることができる「国民請願」というサービスがあるが、ここに早速「N番ルーム事件の根本的解決のため、韓国と(テレグラムの会社がある)ドイツによる国際協力捜査を請願する」という要望ページが誕生した。

国民請願はオンライン署名制になっていて賛同者が20万人を超えると、大統領府は何らかの回答をしなくてはならない。もちろん、この要望は1月23日には回答要件である20万人を突破している。3月18日には達成人数10倍200万人をも突破した。

3月18日には、「首謀者の身元公開と被害女性のホットライン開設を求める」という要望ページも誕生し、もうすでに230万人以上(3月23日現在)の賛同を得ている。これを受け、警察では3月24日午後2時に情報公開の可否をめぐり審議委員会を開催。「博士」ことチョ・ジュビン容疑者(24)の顔写真と身元情報を公開した。

一方、これよりも1日前の23日にSBSニュースが「博士」の情報を顔写真と共に単独報道を行い話題となった。また、文在寅大統領も事態を重く受け止め、異例の速さで警察に徹底調査の指示を出すなど、韓国の世論とメディアの力を見せつけた。

現在、市民たちの怒りの矛先は残りの首謀者たちはもちろん、お金を払っていたトークルーム参加者にも向こうとしている。女優のムン・ガヨンは21日、自身のインスタグラムに「加入者全員の身元公開を望みます」という国民請願を提出したことを発表した。すると、すぐに多くの賛同を得て、こちらも200万人以上の署名が集まっている。

また、女性アイドルグループGirl's Dayのヘリや女優ハ・ヨンス、男性アイドルグループEXOのベクヒョンとチャンヨルなど多くの芸能人もSNSにこの事件に対するコメントを載せ話題となった。

被害者のケアを

テレグラム上では、N番ルーム以外にいくつかのトークルームが存在し、それぞれ管理者が異なっていて複雑化していたが、今回の韓国裏わいせつ動画SNS関連にかかわった会員の数は一説では26万人を超えると言われている(韓国の報道ではその中でも実際にわいせつ動画トークルームに出入りしていた会員は3万人とも言われている)。今後、自分の情報公開が始まるかもしれないと内心震え上がっている元会員たちも多いだろう。しかし、今更後悔したところで自業自得である。

今後、このような猟奇的で卑劣な事件が二度と起こらないよう、被害者女性たちのプライバシーと心のケアをしっかりとサポートしたうえで、加害者には重刑を望むとともに、これは韓国だけでなくどの国でも起こりえる問題であるという点をしっかり考えていかなくてはならない。


*容疑者の身元情報公開を受けて、情報を更新しました。

【関連記事】
・韓国、新型コロナウイルス対策でも役立った個人情報公開 性犯罪者はネットで住所も丸裸
・韓国3大未解決事件「華城連続殺人」犯人が自白 映画は解決にどこまで迫った?


20200331issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年3月31日号(3月24日発売)は「0歳からの教育 みんなで子育て」特集。赤ちゃんの心と体を育てる祖父母の育児参加/日韓中「孫育て」比較/おすすめの絵本とおもちゃ......。「『コロナ経済危機』に備えよ」など新型コロナウイルス関連記事も多数掲載。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任し国連大使に指

ワールド

米との鉱物協定「真に対等」、ウクライナ早期批准=ゼ

ワールド

インド外相「カシミール襲撃犯に裁きを」、米国務長官

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官を国連大使に指名
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中