最新記事

新型コロナウイルス

新型コロナ:「医療崩壊」ヨーロッパの教訓からいま日本が学ぶべきこと

Lessons from the European Lockdown

2020年3月29日(日)13時30分
國井修(グローバルファンド〔世界エイズ・結核・マラリア対策基金〕戦略投資効果局長)

スペインの首都マドリードの見本市会場に設置された新型肺炎患者用の病床 COMUNIDAD DE MADRIDーREUTERS

<パンデミックの主戦場と化した欧州各国の悪夢を、日本は避けられるのか。スイス・ジュネーブ在住でロックダウンに至るまでの各国の過程を目の当たりにした感染症対策の第一人者が提言する、いま日本に求められていること>

新型肺炎によって、私が住むスイスのジュネーブもゴーストタウン化した。20200407issue_cover200.jpg非常事態が宣言され、国境は閉鎖、外出も制限された。

観光客でにぎわっていたレマン湖畔に人影はなく、私のオフィスはじめ国際機関のビルも閉じられた。自宅勤務を余儀なくされているが、通常業務に加え新型肺炎対策のため、かえって繁忙だ。

対岸の火事と見ていた欧州で火の手が上がったのは2月下旬。あっという間に欧州全域の44カ国に感染が広がった。

特にイタリアの感染流行は文字どおり爆発的だ。3月19日に新型肺炎による総死者数が中国を超えて世界最多に。その後も記録を伸ばし、3月26日現在の死者数は7505人、中国の2倍以上である。イタリア北部の地元紙は訃報欄が10ページにも膨らみ、遺体の搬送に軍が出動している。

スペインでの流行も指数関数的な広がりだ。3月23日の一晩で新規感染者は6000人以上増加し、現在累計で6万人超。死者数は中国を超えた。遺体の安置場所が足りず、ショッピングモール内のスケート場を利用している。

ドイツ、フランス、スイス、イギリスも感染者数で世界のトップ10入りし、以降も欧州諸国が名を連ねる。特に人口100万人当たりの感染者数を見ると、世界のトップ20がほぼ欧州の国である。WHO(世界保健機関)は「今や欧州がパンデミック(世界的大流行)の中心地となった」と言うが、まさに新型コロナとの主戦場だ。

なぜこんなことになったのだろう。

イタリアの感染拡大の理由として、EUの中でも高齢者の割合が多いこと、経済危機で医療費が大幅に削減されベッドや医療従事者の数が少ないことなどを挙げる人もいるが、私はそれ以上に重要なのは「人々の意識と行動」、そして「政治的決断」だと思う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相が退陣表明、米関税で区切り 複数の後任候補

ワールド

石破首相が辞任表明、米大統領令「一つの区切り」 総

ワールド

インドは中国に奪われず、トランプ氏が発言修正

ワールド

26年G20サミット、トランプ氏の米ゴルフ場で開催
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「稼げる」はずの豪ワーホリで搾取される日本人..給与は「最低賃金の3分の1」以下、未払いも
  • 3
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接近する「超巨大生物」の姿に恐怖と驚きの声「手を仕舞って!」
  • 4
    ロシア航空戦力の脆弱性が浮き彫りに...ウクライナ軍…
  • 5
    金価格が過去最高を更新、「異例の急騰」招いた要因…
  • 6
    コスプレを生んだ日本と海外の文化相互作用
  • 7
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習…
  • 8
    「ディズニー映画そのまま...」まさかの動物の友情を…
  • 9
    今なぜ「腹斜筋」なのか?...ブルース・リーのような…
  • 10
    「日本語のクチコミは信じるな」...豪ワーホリ「悪徳…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 3
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習慣とは?
  • 4
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 5
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接…
  • 6
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 7
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 8
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 9
    「稼げる」はずの豪ワーホリで搾取される日本人..給…
  • 10
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨッ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中