最新記事

サプライチェーン

新型コロナウイルスで物流遮断 世界の陸海空でモノが大渋滞

2020年3月29日(日)10時00分

西側諸国の物流業者が陸運、海運、空運のすべてで悪戦苦闘している。写真は17日、ドイツとポーランドの国境で検温を受けるトラック運転手(2020年 ロイター/Axel Schmidt)

西側諸国の物流業者が陸運、海運、空運のすべてで悪戦苦闘している。新型コロナウイルスの世界的大流行により、西側各国政府が封鎖措置の導入を余儀なくされたためだ。イタリアなど感染が最も深刻な国では、医薬品など必需品の供給に支障が生じかねない事態となっている。

中国は新型コロナの感染拡大阻止で思い切った対応策を取り、国内経済が徐々に回復しているが、他の国・地域ではサプライチェーンが滞っている。

関係者によると、物流業界はトラック運転手の確保難や船員に対する規制、航空貨物の容量不足などさまざまな問題に見舞われ、円滑な配送が難しくなっている。さらに消費者の買いだめやパニック買いがサプライチェーンのひっ迫に追い打ちをかけている。

物流大手・アジリティの最高コマーシャル責任者、モハメド・エサ氏は「サプライチェーンの混乱は、東側から西側へと急速に移った」と話した。

物流業界の関係者によると、最も大きな打撃を受けているのが空運業界。航空機の運航停止が増えたためで、医薬品や生鮮品など主要商品の輸送に問題が起きている。エサ氏によると、通常なら2、3日の輸送期間が2倍に伸びている。

医薬品原料の輸送に空運を使っている欧州のサプライヤーは、航空機での輸送は難しいと説明した。

米国は外国人の入国禁止措置により、航空貨物の輸送能力が推定で85%低下した。大量の貨物を下部貨物室で輸送していた旅客機の運航が止まったためだ。関係者によると、運航を続けている旅客機の貨物スペースは限られ、貨物輸送のコストは5倍に跳ね上がった。

関係者によると、欧州から米国への輸送はメキシコやカナダを経由するルートに変更されたが、輸送時間が伸びてコストも上がった。

ヘルマン・ワールドワイド・ロジスティックスの最高コマーシャル責任者、ヨヘン・フリーゼ氏によると、欧州から米国への輸送コストは通常、1キログラム当たり1ユーロ弱だが、今は5ユーロから10ユーロと「大幅に上昇している」。

陸運業界でも国境通過に時間を要するようになり、特にイタリアなど新型コロナ感染の影響が甚大な欧州諸国との往来には時間がかかる。

ヘルマンのフリーゼ氏は「十分なトラック輸送能力を確保するために運転手の手当てを引き上げており、貨物リスクに絡むコストが上がっている。こうしたコストがさらに上昇するのは間違いない」と述べた。

スペイン人のトラック運転手、オスカー・プリエトさん(48)は、ガソリンスタンドがサービスを渋り、食事やトイレの利用で困った目に遭ったという。倉庫や工場に着いても施設に入れてもらえず、事務手続きの間、屋外で待たされた。「トラック運転手を犬のように扱うところもある」という。

イタリア交通・運輸同盟のグイド・ニコリーニ委員長によると、一部の国では国境管理によって越境に時間がかかり、運転手に認められた滞在時間が制限され、オーストリアなどの国境で問題が発生している。

スペインの物流業界団体の広報担当者は、全運転者に行き渡るだけのマスクや手袋が十分にそろっていないのが最も心配な問題だと述べた。

海運業界は、欧州や米国でコンテナが不足している。船員不足も船舶によるサプライチェーンに打撃となっている。

国際海運会議所(ICS)のガイ・プラッテン事務局長によると、世界各地で船舶が入港を拒否され、船員は交代が難しいため帰宅できない。

プラッテン氏は「渡航制限や国境封鎖、航空機による旅行のキャンセル、船舶での14日間以上の隔離措置などが今では当たり前になった。船舶を動かす船員がいなければ通商は成り立たないという事実は無視できない。つまり食品や医薬品、一次産品などがもはや港に届かず、消費者に直接影響が及ぶということだ」と話した。

(Jonathan Saul記者、Sonya Dowsett記者、Lisa Baertlein記者)

[ロンドン/マドリード/ロサンゼルス ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【関連記事】
・中国、感染しても無症状者は統計に反映せず 新型コロナウイルス感染爆発「第2波」の懸念
・新型コロナウイルスをめぐる各国の最新状況まとめ(28日現在)
・デーブ・スペクター「日本がオリンピックを美化するのはテレビのせい」


20200331issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年3月31日号(3月24日発売)は「0歳からの教育 みんなで子育て」特集。赤ちゃんの心と体を育てる祖父母の育児参加/日韓中「孫育て」比較/おすすめの絵本とおもちゃ......。「『コロナ経済危機』に備えよ」など新型コロナウイルス関連記事も多数掲載。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、米国産大豆追加購入の可能性低下も 関税違憲判

ビジネス

トランプ関税違憲判決、米エネ企業のコスト軽減 取引

ワールド

米USTR、新たな301条調査開始へ 主要国の大半

ワールド

トランプ氏、10%の代替関税に署名 最高裁の違憲判
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 3
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由...「落葉帰根」派も「落地生根」派も
  • 4
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 5
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 6
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 7
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 8
    中国政府に転んだ「反逆のアーティスト」艾未未の正体
  • 9
    「窓の外を見てください」パイロットも思わず呼びか…
  • 10
    ディープフェイクを超えた「AI汚染」の脅威──中国発…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 3
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 4
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 5
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 6
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 7
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 8
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 9
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 10
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中