最新記事

米医療

アメリカの新型コロナ感染拡大が中国より深刻そうな理由

Why America's Coronavirus Caseload Looks Worse than China's

2020年3月24日(火)21時12分
カシュミラ・ガンダー

新型コロナの検査を受けるためにニューヨーク・クイーンズのエルムハースト病院に列を作った人々(3月22日) Andrew Kelly-REUTERS

<新型コロナウイルス感染者が3万人を突破しても、実際の感染者数はその10倍?  中韓のウイルス対策に学ぼうとしなかったアメリカの弱点とは>

COVID-19(新型コロナウイルス感染症)のパンデミック(世界的な大流行)が続くなか、アメリカでは感染者の数が3万人を突破。中国を除けば、イタリアに次いで2番目に多い数に達している。

本誌の計算では、アメリカの感染者数(または人口に対する感染者の割合)は今や、当初の感染拡大の中心地だった中国を上回る。中国の人口はアメリカの5倍近いが、COVID-19の感染者数はアメリカの3倍強にとどまっている。この数字はどのような意味を持つのだろうか?

ジョンズ・ホプキンズ大学によれば、2019年12月に中国・湖北省の武漢市で初めて新型コロナウイルスの感染者が確認されて以降、世界全体ではこれまでに35万1731人の感染者が確認されている。このうち人口14億人の中国では、3カ月間で8万1000人の感染が報告されており、3200人以上が死亡している。

それに比べて人口3億2900万人のアメリカでは、1月21日にワシントン州で初の感染者が確認されてから2カ月で、感染者の数は3万5241人に増加。死亡した人の数は400人を超えている。

こうしたデータを早まって深読みすべきではないと専門家は指摘する。国によって、検査率も感染拡大の進行度合いも異なるからだ。

サセックス大学グローバルヘルス政策センター所長のステファン・エルベ教授は、本誌にこう語った。「異なる国同士の医療データを比較する上では注意が必要だ。国によって新型コロナウイルスの検査をいつ、誰が、どのように行うかは大きく違う」

検査能力の拡充が追いつかない

ともあれ、真っ先にCOVID-19が流行した中国では3月半ばに感染拡大のピークを迎え、18日には初めて、国内で発生した新たな感染例がゼロになったと発表された。成功の要因は何か。

「幅広い、積極的かつ強制的なソーシャル・ディスタンシング(社会的距離の確保、武漢の場合は都市封鎖)を行ったことが、中国の感染拡大の抑制に大きく貢献した」と、オックスフォード大学サイード・ビジネススクールのピーター・ドロバック博士(感染症と公衆衛生が専門)は言う。「それだけではない。大規模な検査の実施、感染経路の追跡、感染者の隔離に加えて、医療制度をかつてないほどに強化したことも、きわめて重要な意味を持った」

「こうした介入を行うのには社会的にも経済的にもかなりのコストがかかる。だが今の中国や韓国を選ぶか、それとも今のイタリアを選ぶかと問われたら、大半の人は前者を選ぶだろう」とドロバックは言う。

対照的に、こうした措置を取っていないアメリカでは「急激に感染者数が増えている」と彼は言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

造船やコメなど中小型株に物色、主力株売りでも政策面

ワールド

マクロスコープ:26年春闘、連合「5%超にこだわる

ワールド

ザポリージャ原発、1カ月ぶりに外部電源が復旧

ビジネス

ボルボ・カー、第3四半期利益が予想上回る モデルチ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺している動物は?
  • 3
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシアに続くのは意外な「あの国」!?
  • 4
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 7
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 8
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 9
    国立大卒業生の外資への就職、その背景にある日本の…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 7
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 10
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中