最新記事

映画

韓国シム・ウンギョン、日本アカデミー賞で最優秀主演女優賞 日本映画の新人は芸歴17年の「カメレオン」女優

2020年3月14日(土)18時00分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

シム・ウンギョンの日本アカデミー賞受賞を伝える韓国のニュース SBS 뉴스 / YouTube

<またも冷え込みつつある日韓関係だが、映画の力は国境を越えてすばらしい映画人の交流の結実をみせている>

今月6日、グランドプリンスホテル新高輪にて第43回日本アカデミー賞授賞式が行われた。今年は、新型コロナウイルスの影響もあり無観客スタイルでのやや寂しい授賞式となってしまったが、そんななかで大きな注目を集めるニュースとなったのが、韓国人女優シム・ウンギョンが、日本アカデミー史上初となる外国人による最優秀主演女優賞を受賞したことだ。壇上で号泣しながら受賞スピーチをしている姿は感動的だった。

この『新聞記者』は、最優秀主演女優賞のほか、作品賞と松坂桃李が最優秀主演男優賞を受賞、日本アカデミー賞3冠に輝いた。このほかにも毎日映画コンクール日本映画優秀賞・女優主演賞、エランドール賞特別賞、TAMA映画賞特別賞・最優秀新進女優賞、新藤兼人賞プロデューサー賞などを受賞しており、これを受けて当初47館で凱旋上映が行われる予定だったが、その後映画ファンから次々と熱いリクエストが届き、結果143館が追加され計190館での再上映が決定したという。

一方、シム・ウンギョンの本国・韓国でもこの受賞をきっかけに『新聞記者』再上映が決定した。実はこの作品、昨年10月17日にすでに公開されていたが、日韓関係が冷え込んでいる時期でもあり、観客動員数は約1万人程度で上映終了していた。

しかし、6日のシム・ウンギョンの最優秀主演女優賞受賞の一報が入ると、ネットなどを中心に大きく報道され、それと同時に映画の内容も紹介されたため、映画自体も韓国国内での関心が高まったようだ。

既にネット上では配信サービスに登場していたが、受賞後ネイバーのVODサービス「シリーズオン」では、人気ランキング2位まで一気に上昇、多くの韓国人が映画を鑑賞した。また、映画の予告編が見られるネイバーのベストムービークリップでは検索ランキングで1位を記録した。

このように人々の関心が集まっていることから、韓国の映画シネコンチェーン最大手CGVは、『新聞記者』再上映を決定した。今月11日よりヨンサンや大学路、新村などのソウル市内と、釜山、大田など地方都市で上映が開始されている。また、14日からは光州にある独立系の光州劇場でも再上映が始まった。

テレビでの宣伝できず、口コミで動員伸ばす

映画『新聞記者』は、昨年6月28日に公開された。現役新聞記者である望月衣塑子の同名小説を原案にしたサスペンスストーリーで、松坂桃李さん演じるエリート官僚と、シム・ウンギョン演じる若手新聞記者のエリカが、内閣情報調査室でニュースを操作しているという国家の闇に迫る物語だ。

反政府的で告発もの映画であるがゆえに、テレビでプロモーションがほとんどできなかったと言われている。主演の松坂桃李はインタビューで、この映画の出演を決めたとき、周囲の人達から「よく出ることを決めたな」と言われ、驚かれたそうだ。また、シム・ウンギョンのキャスティングも、日本人女優にオファーしたがすべて断られたからだ、という説もある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

GMメキシコ工場で生産を数週間停止、人気のピックア

ビジネス

米財政収支、6月は270億ドルの黒字 関税収入は過

ワールド

ロシア外相が北朝鮮訪問、13日に外相会談

ビジネス

アングル:スイスの高級腕時計店も苦境、トランプ関税
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「裏庭」で叶えた両親、「圧巻の出来栄え」にSNSでは称賛の声
  • 2
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 5
    セーターから自動車まで「すべての業界」に影響? 日…
  • 6
    トランプはプーチンを見限った?――ウクライナに一転パ…
  • 7
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 8
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 9
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 10
    日本人は本当に「無宗教」なのか?...「灯台下暗し」…
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 5
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 6
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 7
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 10
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中