最新記事

新型コロナウイルス

ダイヤモンド・プリンセス号の感染データがあぶり出す「致死率」の真実

NOT THAT DEADLY

2020年3月11日(水)17時30分
ジェレミー・ファウスト(ハーバード大学医科大学院保健政策・公衆衛生部門講師)

ダイヤモンド・プリンセス号は横浜港到着後、2週間の検疫期間に(2月16日) ATHIT PERAWONGMETHAーREUTERS

<新型コロナウイルスの致死率は過度に高く報じられている? 感染データの分析から得られた結論は、対策を講じるべきなのは「学校ではなく老人ホーム」。本誌3月17日号の特集「感染症vs人類」より>

新型コロナウイルスが、世界中でパニックを引き起こしている。mag20200317coversmall.jpg薬局から手指消毒剤が姿を消し、オンラインではN95マスクがとんでもない高値で取引されている。そのどちらも、まるで1918年に数千万人が命を落としたスペイン風邪の再来のような騒ぎだ。

確かに、現在報じられているCOVID-19(2019年型コロナウイルス感染症)の致死率は2〜3%で、スペイン風邪に近い水準だから、不安に駆られるのは無理もない。だが最終的にこの数字はもっと低いことが明らかになるだろう。米国立衛生研究所(NIH)と米疾病対策センター(CDC)が言及した1%という致死率さえも、このウイルスの威力を過大評価している恐れがある。

新型ウイルスの発生初期に、推定致死率が過度に高く報じられるのはよくあることだ。2009年に流行したH1N1型インフルエンザは当初、最終的な致死率1.28%の10倍近い数字が取り沙汰された。今回も同じような現象が起きている。

新型コロナウイルスの感染者が湖北省武漢で爆発的に増えたとき、致死率は4%超とされていた。やがて湖北省の他の地域に感染が広がると、致死率は2%に、中国全体に広がると0.2~0.4%に低下した。無症状者や軽症患者も検査対象に含められるようになると、より現実的な数字が明らかになってきた。

WHO(世界保健機関)は最近の報告書で、世界的な致死率を3.4%と予想以上に高く示したが、パニックに陥る必要はない。最終的には、この数字が1%を大幅に下回ることを示唆する、極めて直接的かつ説得力のある証拠が存在する。それは豪華クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の感染データだ。

語弊を恐れずに言うと、隔離されたクルーズ船は、ウイルスの性質を研究するには絶好の実験室だ。何しろ、通常はコントロールできない多くの条件がそろっている。ダイヤモンド・プリンセスの場合、乗客・乗員3711人のうち、乗船時に新型コロナウイルスに感染していたのはたった1人で、それ以外は基本的に旅ができるほど健康で、限られた場所(船内)でウイルスにさらされた。

中国からは恐ろしい数字が発表されていたが、そのうち何人が別の病気を持っていたかは分からない。いったい何人が命に関わる別の病気で既に入院していて、そこで新型コロナウイルスに感染したのか。健康だったのに、このウイルスに感染して、重症化したのは何人なのか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送-トランプ氏、イランと接触と発言 交渉には懐疑

ワールド

トランプ氏、ホルムズ海峡警備で協力要求 「7カ国と

ワールド

英首相、ホルムズ海峡巡りトランプ氏と協議 カナダ首

ワールド

ホルムズ護衛参加まだ求められていない、必要な対応方
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目のやり場に困る」衣装...「これはオシャレなの?」
  • 3
    「筋肉はモッツァレラと同じ」...なぜウォーミングアップは「2セット」でいいのか?
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    機内で「人生最悪」の経験をした女性客...後ろの客の…
  • 6
    幼い子供たちの「おぞましい変化」を克明に記録...「…
  • 7
    ぜんぜん身体を隠せてない! 米セレブ、「細いロープ…
  • 8
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 9
    有人機の「盾」となる使い捨て無人機...空の戦いに革…
  • 10
    50代から急増!? 「老け込む人」に共通する体の異変【…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 5
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 6
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 7
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 8
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 9
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中