最新記事

ウイグル弾圧

新型肺炎の流行地にウイグル人労働者を送り込む中国政府の非道

CHINESE FORCED LABOR EXPOSED

2020年3月10日(火)17時10分
水谷尚子(明治大学准教授)

自治区内でマスク製造に従事するウイグル人(1月27日) CNSPHOTO-REUTERS

<感染を恐れて中国人労働者が集まらないのを補塡するため、各地の工場にウイグル人が派遣されている>

世界のトップ企業に供給される部品を製造する中国の工場では2017年から19年にかけて、新疆ウイグル自治区の収容施設から移送された8万人ものウイグル人が強制労働させられている──。シンクタンクのオーストラリア戦略政策研究所が3月1日に発表したレポートが世界に波紋を広げている。

レポートはウイグル人の強制労働が行われているのは「アップル、BMW、ソニー」の関連工場だと言及しているが、この動きは新型肺炎の拡大後、違う形で加速している。

同自治区のニュースサイト「天山網」は3月4日、「私たちは元気で暮らしています──新疆生まれの労働者たちの声」と題する記事を配信した。それによると「2月23日、97人の若者が専用機でアクスから杭州に行き、杭州日月電器有限公司で働くようになった」。この工場は電気コネクタなどを生産しており、生産品の80%以上をアメリカや日本、フランスなどに輸出している。杭州は浙江省の省都であり、浙江省は湖北省に次ぐ新型肺炎の流行地となった場所だ。

さらにその記事は「2月27日と29日、ホタン市とその周辺から185人が福建省晋江市に赴き、スポーツシューズ製造工場で労働を始めた」「ホタン地区グマ県からは3月1日、169人が出発し、その日の晩に山東省青島市の聯洋水産品有限公司に到着した」とも記している。また新華社通信の記事には「2月27日、ホタン市とカラカシ県の353人の農民が飛行機で広西チワン族自治区の南寧市と福建省晋江市に赴いた」とある。

いずれも「新型肺炎の検査を経て、健康に問題のない者たちが貧困脱出のために出稼ぎに出た」ことが記されている。さらに人民日報ネット版の1月13日の報道では、カシュガル地区マルキト県から1025人のウイグル人が、新型肺炎の蔓延する湖北省や北京などに派遣されたことが、はっきり記されている。

1月から3月にかけての官製メディアの報道を分析すると、新型肺炎が蔓延する湖北省や隣の湖南省、中国沿海の工業発展地域に南新疆出身のウイグル人が「出稼ぎ」に出されていると分かる。彼らは当局の管理の下、飛行機で大量移送させられている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

過度な為替変動に警戒、リスク監視が重要=加藤財務相

ワールド

アングル:ベトナムで対中感情が軟化、SNSの影響強

ビジネス

S&P、フランスを「Aプラス」に格下げ 財政再建遅

ワールド

中国により厳格な姿勢を、米財務長官がIMFと世銀に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    ギザギザした「不思議な形の耳」をした男性...「みんなそうじゃないの?」 投稿した写真が話題に
  • 4
    大学生が「第3の労働力」に...物価高でバイト率、過…
  • 5
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 6
    【クイズ】世界で2番目に「リンゴの生産量」が多い国…
  • 7
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 10
    インド映画はなぜ踊るのか?...『ムトゥ 踊るマハラ…
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 4
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 5
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃を…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 10
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中