最新記事

ドイツ

いよいよドイツもパニックか 買い占めにアジア人差別 日本人も被害に

2020年3月4日(水)18時30分
モーゲンスタン陽子

アジア人に対する嫌がらせもさらに悪質になった

トイレットペーパーや消毒液などは軒並み売り切れで、オンラインでは便乗値上げもちらほら見かける。マスクも品薄状態だが、街中でマスクをしている人を見かけることは少ない。アジア人も、マスクをしていると逆に嫌がらせをされるので、控えているようだ。メディアでは先週からヨーロッパの感染状況のニュースが増えているが、記事とまったく関係のないマスク姿のアジア人の写真が使われることも多く、正直うんざりする。

アジア人に対する嫌がらせもさらに悪質になった。これまでも、睨まれる、指をさされる、電車で敬遠される、罵声をあびせられるなどはあった。だが、先月29日、バイエルン州ニュルンベルク市近郊で最初の感染者が出ると、自宅のシャッターに生卵が投げつけられる日本人もいたという。

また、ニュルンベルクのある中華レストランでは以前からも、客にいいがかりをつけられ食い逃げされる、などということが続いているようだ。さらに、市の国際交流課によると、ドイツ生まれの中国系生徒が1年以内の中国渡航歴はなかったにも関わらず学校から追い返されたという。バイエルン州では今年、2月の最終週は冬休みだったが、問題視されている地域に旅行した者は登校を自粛するよう日曜日に連絡がまわっていた。

ドイツ南部の同市にはイタリア人も多いが、正直、これらのことがイタリア人に起こっているとは考え難い。1日にはライプツィヒで、サッカーのブンデスリーガ1部の試合で日本人観客が追い出されるという事件があった。

どさくさに紛れて強権的な新法が成立する危うさ

不安+無知=ヘイトの構図は非常時の定番だが、これは2つの意味でたいへん危険だ。まず、ドイツでは最近ヘイトクライムが増えており、つい2週間前にハーナウで「移民風の」人々が10人銃殺されたばかりだ。それなのに、コロナ騒動でその事件は瞬く間に忘れ去られてしまったようだ。

次に、どさくさに紛れてよく分からないうちに新法が成立してしまう可能性だ。ナチ政権下でそれをいやというほど経験したドイツではその危険性は少ないかもしれないが、たとえばイギリスでは先月10日、感染を疑われる者を本人の意思にかかわらず拘束できる新法が発効し、物議を醸している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    メーガン妃の「下品なダンス」炎上で「王室イメージ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中