最新記事

新型コロナウイルス

新型コロナウイルス感染症はいつ、どう終息するのか

Can Coronavirus Be Stopped and How Have Other Pandemics Ended?

2020年3月5日(木)16時43分
カシュミラ・ガンダー

オクスフォード大学「人類の未来研究所」の上級研究フェローでパンデミックの専門家ピアーズ・ミレットは本誌に、「WHOは既に現在の流行の危険度を最高レベルに引き上げている。公衆衛生上はパンデミックかどうかより、こちらのほうがはるかに重大だ」と語った。

パンデミックかどうかに関わりなく、過去の事例から、新型の病原体は短期間に急速に広がるか、長期にわたってじわじわと広がるか、いずれかのパターンを取ることが分かっていると、ミレットは言う。短期型は致死率が非常に高いため、感染の拡大は抑えられる。一方、長期型は「膨大な数」の感染者が出るものの、死者は比較的少ない。

チューによれば、新型の病原体は「ある時点で人口のかなりの割合が免疫を持つようになり、感染拡大に歯止めがかかる」のが通常のパターンだが、封じ込め策も流行を終わらせる効果がある。

史上最多の死者を出した1918年のスペイン風邪は、感染者が死ぬか、免疫を獲得し、ウイルスがとりつく新たな宿主がほとんどいなくなった時点で終息した。1957年のアジア風邪はワクチンが早期に開発され、抗生物質で合併症が抑えられ、一部の人たちが免疫を獲得したことがあいまってコントロールできる状態になった。

ウイルスの生存戦略

2003年のSARSでは774人の死者が出たが、感染地域の封鎖や感染者の隔離など封じ込め策の効果もあって終息した。SARSは初期における診断が比較的簡単で、地理的に封じ込めが可能だったことが幸いしたと、チューは言う。

しかし病原体が多くの国に広がり、感染が拡大すると、封じ込めでは感染を阻止できず、せいぜい拡大のスピードを抑えることしかできなくなると、チューは指摘する。「それでもピーク時の山の高さを抑えることで、感染者が病院に殺到して医療が崩壊する事態を防ぐ効果は期待できる」

ミレットによれば、新型コロナウイルスは今のところ、動物から人にうつった新型の「攻撃的なウイルス」に典型的な振る舞いをしているという。

「ウイルスの立場からすれば、宿主を殺せば増殖できなくなり、存続できなくなる。うまく適応したウイルスは、宿主を病気にしても殺さない。COVID-19も動物由来のウイルスであれば、今後数週間に新しい宿主に適応するにつれて、症状の重篤さが和らぎ、流行の猛威は収まっていくと考えられる」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=小反発、ナスダック最高値 決算シーズ

ワールド

トランプ氏、ウクライナ兵器提供表明 50日以内の和

ワールド

ウへのパトリオットミサイル移転、数日・週間以内に決

ワールド

トランプ氏、ウクライナにパトリオット供与表明 対ロ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 2
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 3
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別「年収ランキング」を発表
  • 4
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 7
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 10
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中