最新記事

日本企業

ソフトバンク、フランチャイズの携帯ショップ「強制閉店」の非情 一方的通知は「優越的地位の濫用」との指摘も

2020年2月21日(金)18時50分
山田 雄一郎 奥田 貫(東洋経済 記者)*東洋経済オンラインからの転載

店舗評価が良くても気を抜けない

販売店に課している閉店ルールは優越的地位の濫用に当たるのではないのか。ソフトバンクに尋ねると、「機密事項や営業戦略に関わるため、各種資料や質問状に記載いただいた内容について、事実関係の有無を問わず、詳細のご説明は差し控えさせていただきます。なお、本件に関わらず各種施策は、社内弁護士や顧問法律事務所に確認のうえ実施しています」(広報室)との回答だった。

ソフトバンクには店舗評価のほかに「オーナー評価」という指標もある。これはオーナーが運営する店舗全体の成績のほか、運営規模などさまざまな項目に基づいて決まっている。店舗評価と同様、S、A、B、C、Dの5段階でランク分けされている。店舗評価がSでもオーナー評価が低いとソフトバンクから支払われるインセンティブ(手数料や報奨金)が少なくなる。

以下は冒頭のソフトバンク担当部長と販売店オーナーとの別のやり取りだ。

ソフトバンク担当部長:オーナー評価Bだとどの企業も今、赤字になっていて、継続運営は難しいということで他社に譲渡いただく商談をさせていただいています。オーナー評価Bだと今後、儲けさせることができないからです。

販売店オーナー:Bで、儲からないですか?

ソフトバンク担当部長:儲からないです。

販売店オーナー:S、A以外はもう、死ねということですか?

ソフトバンク担当部長:「死ね」とは言わないですけれども、うちの事業ではA以上をとっていただかなければ、儲からない形になります。

狙いは販売店の集約化?

このやり取りの中で、ソフトバンクの担当部長は「B以下のオーナーが全体の約6割」とも話している。そこと「他社への譲渡」について商談しているのであれば、成績上位の4割のオーナー(評価がSかA)に販売店運営の集約を図っているということになる。野村総研の北氏はこうした動きについて、「ソフトバンクは今後1年以内に販売店の整理・再編にメドをつけようとしているようだ」と見る。

同業他社のNTTドコモやKDDIもこれまで販売店の整理・再編を推し進めてきた。それは、「ドコモは20年、KDDIは10年がかりの取り組みだ」(北氏)。ソフトバンクは携帯事業で数千億円規模の利益を毎期上げている。B評価のオーナーでも儲からないような状態にするのではなく、販売店に対する利益の分配を考えるべきだろう。

ソフトバンクは「店舗の閉店につきましては、一方的に行うものではなく、当社と店舗側との協議のうえで進めさせていただいています」(広報室)と言う。だが、冒頭のソフトバンク担当部長との会話記録からは、一方的に決めたルールに機械的に当てはめて、閉店を勧告しているようにしか見えない。

前出の中村弁護士は「閉店以外の選択肢を与えていないので明らかな強制だ。仮に販売店の承諾を取ったとしても、それも承諾と称する強制にあたる。ソフトバンクは、販売店が文句を言えない立場に付け込んでいる」と批判する。はたして、D評価が3回で"アウト"という閉店ルールの運用をどこまで続けるのだろうか。

※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。
toyokeizai_logo200.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

焦点:米中貿易休戦、海外投資家の中国投資を促す効果

ビジネス

米国株式市場=反発、アマゾンの見通し好感 WBDが

ビジネス

米FRBタカ派幹部、利下げに異議 FRB内の慎重論

ワールド

カナダはヘビー級国家、オンタリオ州首相 ブルージェ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 7
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 8
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 9
    【ロシア】本当に「時代遅れの兵器」か?「冷戦の亡…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中