最新記事

2020米大統領選

ブルームバーグは打倒トランプの救世主か、民主主義を破壊する億万長者か

How the Shadow Candidate May Win

2020年2月19日(水)15時50分
マリー・ハリス(ラジオパーソナリティー)

──でも国家レベルだと金額のスケールが違うはず。さすがに自分の財布だけでは賄えないのでは?

もちろん、大統領になっても今までどおりにやって、支持固めに年間10億ドルを投じ続けられるとは思えない。それでもブルームバーグが大統領になって、公約のインフラ整備法案を成立させようと思うなら、何でもするだろう。必要があれば、おそらくどこかの選挙区で立候補した人に資金を提供することも辞さないと思う。

──お金で反対派を黙らせるという戦術は、ブルームバーグが昔から、いろんな場面で使ってきたもの。例えば女性関係。彼の会社には、妊娠の事実を告げたら中絶しろと言われた、と訴えている女性もいる。

女性従業員との性的関係についても、いろいろ噂がある。今年の大統領選はセクハラ廃絶の#MeToo運動が始まってから初めてのものだ。果たしてブルームバーグは、過去の女性問題をうまく乗り切れるだろうか。

そのへんのことは、既に動きだしている。彼との関係を口外しないという契約を、もう破棄したいという女性たちがいる。もちろん、ブルームバーグは応じていないが。裁判で証言が出たりすることはあるだろうし、そう簡単に決着はつかない。

──いずれにせよ、ブルームバーグが出馬したのは資金があるから。そして現に、自分は金持ちだから賄賂の誘惑に負けることはないと主張していて、それが一定の説得力を持っている。つまり、彼は他人が自分のことをどう思うかなど気にしていない。でも彼が民主党の予備選に本気で参戦すれば、これが問題になると思う。金持ちは本当に潔白なのか、この国は金持ちに任せておけばいいのかということが。

まあ、ブルームバーグ現象の全ては金に関係している。それは事実。そして金持ちのイメージは民主党に似合わない。実際、誰でもいいからトランプに勝てる候補が欲しいという思いがこれほど強くなければ、ブルームバーグへの期待が高まることもなかったはずだ。

アイオワ州の党員集会の数日前に、私は左派候補のエリザベス・ウォーレン上院議員の選挙集会を取材していた。緒戦の党員集会や予備選をパスして、莫大な資金力を武器に主要州での勝負に懸けるブルームバーグのやり方を、彼女は民主主義の敵だと非難した。まあ、一理はある。

──敵がトランプでなくても、ブルームバーグはここまで注目されたと思うか?

ブルームバーグの壮大な資金力と、トランプという敵の存在。この2つがなければ、私たちもこんな話をしていないだろう。

©2020 The Slate Group

<2020年2月25日号掲載>

【参考記事】ブルームバーグ出馬に民主党内からも批判噴出の理由
【参考記事】優等生政治家ブルームバーグに足りないもの

20200225issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年2月25日号(2月18日発売)は「上級国民論」特集。ズルする奴らが罪を免れている――。ネットを越え渦巻く人々の怒り。「上級国民」の正体とは? 「特権階級」は本当にいるのか?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米シティ、ロシア部門売却を取締役会が承認 損失12

ワールド

韓国大統領、1月4ー7日に訪中 習主席と首脳会談

ワールド

マレーシア野党連合、ヤシン元首相がトップ辞任へ

ビジネス

東京株式市場・大引け=続落、5万円台維持 年末株価
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 5
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 6
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中