最新記事

野生動物

ヒヒにさらわれ子どもにされた子ライオンの悲劇

Male Baboon Kidnaps Lion Cub in South Africa Safari Park

2020年2月5日(水)18時30分
ロージー・マコール

南アフリカのサファリパークで目撃されたヒヒと子ライオン www.kurtsafari.com

<そのヒヒはオスだったが、メスが子どもをかわいがるようにライオンの子どもの世話をしていた>

オスのヒヒが幼いライオンの子をさらい、まるで子どものように毛づくろいをし、面倒を見る姿が撮影された。2月1日、南アフリカのクルーガー国立公園でのことだ。

このヒヒを見つけたのは、サファリ会社のカート・シュルツ。

2月1日の朝、この場所にやってきたとき、落ち着きのないヒヒの群れに出くわしたという。

「非常に興奮したヒヒの群れだ」と、シュルツは言う。

群れの中に、ライオンの子どもをさらったヒヒがいた。そのヒヒはオスで、道を渡って木に登るところだった。

群れが落ち着きを取り戻すと、ヒヒは子ライオンの「毛づくろいをし、世話をした」という。「子どもだと信じているように見えた」

ヒヒがライオンやヒョウの子どもを殺すのは珍しくないが、さらって世話をするのは珍しいという。

「サファリガイドを20年やってきて、ヒヒがヒョウの子どもを容赦なく殺す場面は何度となく見た。ヒヒがライオンの子どもを殺す話も聞いたことがある。だが、ライオンの子どもの世話をするのは初めてだ」

<参考記事>オーストラリア森林火災、「ウォンバットが野生動物を救出」は本当?

子ライオンは疲れ切っていた

子ライオンは目に見えるケガはしていなかったが、疲れ切っていたという。緊張しきっていたのかもしれない。生き延びるのは難しいとシュルツは言う。

「ヒヒの群れは大きな群れだったので、たとえ母親が子どもを取り戻しにきても、1頭では無理だろう。自然は残酷なもので、幼い肉食動物の子が生き残るのは容易ではない」

この一件は、ディズニーの映画『ライオン・キング』を思い起こさせる。年老いたヒヒのラフィキが、幼いころのシンバ(主人公のライオン)を抱き上げる場面は感動的だ。

<参考記事>映画『ライオン・キング』は超リアルだが「不気味の谷」を思わせる

ただし現実は、シュルツが言うように厳しいようだ。クルーガー国立公園からの最新の情報によると、子ライオンは生き延びられなかったという。

(翻訳:ガリレオ)

20200211issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年2月11日号(2月4日発売)は「私たちが日本の●●を好きな理由【韓国人編】」特集。歌人・タレント/そば職人/DJ/デザイナー/鉄道マニア......。日本のカルチャーに惚れ込んだ韓国人たちの知られざる物語から、日本と韓国を見つめ直す。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

韓国地裁、保守系候補一本化に向けた党大会の開催認め

ビジネス

米労働市場は安定、最大雇用に近い=クーグラーFRB

ワールド

パナHDが今期中に1万人削減、純利益15%減 米関

ビジネス

対米貿易合意「良いニュース」、輸出関税はなお高い=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 2
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..最新技術で分かった「驚くべき姿」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 5
    骨は本物かニセモノか?...探検家コロンブスの「遺骨…
  • 6
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 7
    中高年になったら2種類の趣味を持っておこう...経営…
  • 8
    教皇選挙(コンクラーベ)で注目...「漁師の指輪」と…
  • 9
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 10
    韓国が「よく分からない国」になった理由...ダイナミ…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 7
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 8
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 9
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 10
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中