最新記事

テクノロジー

3年前に亡くなった7歳の娘と「再会」 韓国、VRを使ったテレビ特番が賛否呼ぶ

2020年2月23日(日)16時00分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

生前の写真や動画からナヨンちゃんを再現

VR画像の中にそっくりのナヨンちゃんを再現させる作業は、家族が生前に撮影した写真や動画から、ジェスチャー/声/喋り方を分析することから始まったという。そして、不足部分は同じ年ごろのモデルに動いてもらい、160個のカメラで360度撮影できるモーションキャプチャー技術を用いたという。

さらに、声の部分はセリフをしゃべらせるために、ディープラーニングと呼ばれるAI技術を駆使している。生前の1分余りの声データに5人の同年代の子供の声をそれぞれ800文章ずつ録音して、それをAIでナヨンちゃんの声に再構築するのである。気になる製作費だが、番組制作費1億ウォン(920万円)だったと公表されており、そのほとんどがナヨンちゃんのCG制作に使われた費用だという。

このようにしてできたVR映像は、今でもYouTubeやVR会社VIVEスタジオの会社HPで観ることができる。10分程度のVRの内容は、ナヨンちゃんが林の中に登場し、母親と再会し、その後誕生日を祝う。ケーキの横にはナヨンちゃんが好きだった「꿀떡クルトッ」と呼ばれる韓国のお餅も並んでいる。これは、制作過程のインタビューで事前に父親からナヨンちゃんの好物をリサーチし反映させたのだという。その後、母親へ手紙を読んで、ベッドに横たわる。「もう悲しまないで、思いつめないで。ただ、愛してね」と告げて眠りにつくナヨンちゃん。多少、アニメっぽさはあるにしても、顔や声はVR体験をした家族には十分な再会となった。

亡くなった家族に会いたい人びと

この特番を担当したプロデューサーのキム・ジョンウ氏は、企画のきっかけをこう語っている。「会社の同僚がチリ山に星を見に行った。理由を聞くと亡くなって天にいる家族に会いたいからだという。それを聞いてこのプロジェクトを思い立った。企画を進めるなかで、記憶とは一体何だろうと悩み、ただ見世物にするだけではなく心に深く寄り添ってみようと考えた」という。

VR制作監督を務めたVIVEスタジオのイ・ヒョンソク氏は、初めこの企画を聞いた時、「慎重になるべきだ」と考えたという。その後、母親ともミーティングを繰り返し、どのような考えと哲学を持っているか十分話し合って企画の実行を決めたと語っている。

確かに、愛する者を失くした心の治癒になるかもしれないが、その傷が深かった分、しっかりした考えを持っていない場合、どこかのSF映画のように仮想現実の世界にのめり込んでしまう危険性もありえる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独鉱工業受注、11月予想外の増加 大型受注が寄与

ワールド

トランプ氏、ベネズエラ監視の長期化示唆=NYタイム

ビジネス

トヨタのEV「bZ4X」、国内EV販売で初の首位 

ビジネス

英12月住宅価格は前月比-0.6%、予想外の下落=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 5
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじ…
  • 6
    マドゥロ拘束作戦で暗躍した偵察機「RQ-170」...米空…
  • 7
    トランプがベネズエラで大幅に書き換えた「モンロー…
  • 8
    日本も他人事じゃない? デジタル先進国デンマークが…
  • 9
    公開されたエプスタイン疑惑の写真に「元大統領」が…
  • 10
    衛星画像で見る「消し炭」の軍事施設...ベネズエラで…
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 9
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 10
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中