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ブレグジット

ブレグジット後の不気味な未来、北アイルランドが血で染まる日

A Possible Return to Violence

2020年1月30日(木)18時30分
ジェーソン・ブラザキス(ミドルベリー国際問題研究所)、 コリン・クラーク(カーネギー・メロン大学)

武装勢力の脅威は高まる一方

そうであれば、プロテスタント系の準軍事組織の残党が勢いを盛り返すのは必至だ。ジョンソン政権の合意発表以来、ユニオニスト諸政党が各地で開いた抗議集会にも、彼ら過激派の姿があった。しかも、このところ増えている襲撃事件の多くにはプロテスタント系過激派の関与が疑われている。

今回の離脱協定は厄介な問題のいくつかを解決したが、まだ北アイルランドの将来像は見えてこない。この協定は物理的な国境の復活を想定していないが、EUとの貿易交渉の行方次第では復活の可能性がある。

共和国派はその可能性が高いとみており、だからこそ南北統合の住民投票実施をアイルランド政府にもイギリス政府にも強く求めている。EU離脱の経済的影響が顕在化していない今でさえ、こうなのだ。離脱後に北アイルランド経済が苦しくなれば、政治的にもただでは済むまい。

当然のことながら、武装勢力は事態の推移を注意深く見守っている。そして彼らは自分たちの偏狭な信念に従って行動する。EU離脱の国民投票以来、当地では武装勢力の脅威が徐々に高まってきた。離脱後の将来像が描けなければ、彼らの不気味な影は伸びるばかりだ。

From Foreign Policy Magazine

<2020年2月4日号掲載>

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