最新記事

首脳の成績表

ボルソナロ(ブラジル大統領)の成績表:差別発言を連発する「問題児」、アマゾン森林火災で世界を敵に

2020年1月18日(土)14時15分
宇佐美里圭(本誌記者)

BOYS ROOM=男子トイレ ILLUSTRATION BY ROB ROGERS FOR NEWSWEEK JAPAN

<「南米のトランプ」ジャイル・ボルソナロが就任して約1年――日々暴言をまき散らし、支持率も急降下。世界の首脳を査定した本誌「首脳の成績表」特集より>

「彼女(マリア・ド・ロザリオ下院議員)をレイプすることはない。ブスでタイプじゃないから」「ゲイの息子は愛せない。男と一緒に現れるくらいなら、事故で死んでくれたほうがマシ」「独裁政権の失敗は、拷問しただけで殺さなかったこと」「女の給料は男より低くするべき。妊娠するから」......。

これらは全て、2019年1月にブラジル大統領に就任したボルソナロの発言だ。成績以前の問題で、呼び出し厳重注意、または停学処分が妥当だろう。

この国家指導者はいったい何者なのか。ボルソナロは陸軍士官学校を卒業後、軍人として大尉まで昇進した。だが、実は2度逮捕歴がある「問題児」。給料の低さなどに抗議し、兵舎爆撃計画を企てた前科がある。1989年に政界入りを果たしたが、最近までほぼ無名だった。注目されたのはSNSのおかげだ。2014年の下院選で過激な発言を繰り返し、カリスマのルラ元大統領の2番手に躍り出た。

そんなボルソナロは「ブラジルを再び偉大な国にしたい」と誰かのようなフレーズを連呼し、自国第一主義、財政再建、汚職・犯罪撲滅を掲げて政権に就いた。そして、大統領として何をしたのか。

19年3月、カーニバルで騒ぐ国民にクギを刺すため、男性が別の男性の頭に小便をかける映像をツイッターに投稿し、大炎上。同月、軍事クーデターを祝う「クーデター記念日」の制定を発表。5月、銃の携行要件を大幅に緩和する大統領令に署名。6月、G20に出席するため初来日するも、経由地のスペインの空港で、同行した軍人が39キロのコカイン所持容疑で逮捕された。

18年3月に銃弾を浴びて殺された人権派市議、マリエリ・フランコの殺害にボルソナロが関わっている疑いもまだ晴れていない。真相は不明だが、現大統領と殺人容疑者2人が顔見知り以上の関係であることは事実である。

世界から非難を浴びたアマゾン森林火災問題も忘れてはいけない。8月にアマゾンの火災が前年比85%増加していることが判明すると、ボルソナロは「私を陥れるためにNGOが自ら火を放っている」と反論。フランスで行われたG7で1800万ユーロの支援が合意されると、「当事者なしでの議論は植民地的思考だ」と、これを拒否した。マクロン仏大統領と夫人の年齢差を揶揄する発言をして炎上したのはこのときだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国、EU産豚肉関税を引き下げ 1年半の調査期間経

ビジネス

英失業率、8─10月は5.1%へ上昇 賃金の伸び鈍

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、12月速報値は51.9 3カ月

ビジネス

仏総合PMI、12月速報50.1に低下 50に迫る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 10
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中