最新記事

新型ウイルス

中国、新型コロナウイルス死者200人突破・感染者9692人に 米国は渡航警戒レベル引き上げ

2020年1月31日(金)13時15分

新型コロナウイルスによる肺炎の死者が中国で213人に達した。世界保健機関(WHO)が国際的な公衆衛生上の緊急事態を宣言する中、世界でも感染が急速に拡大している。写真は29日、武漢の薬局でマスクを購入する男性(2020年 ロイター/China Daily)

新型コロナウイルスによる肺炎の死者が中国で213人に達した。世界保健機関(WHO)が国際的な公衆衛生上の緊急事態を宣言する中、世界でも感染が急速に拡大している。

米国務省は30日、中国への渡航警戒レベルを引き上げ、ウェブサイトに掲載した通知文書で、「中国の武漢市で発生した新型コロナウイルスのため」として、国民に中国に渡航しないよう勧告した。警戒レベルはイラクやアフガニスタンと同水準となった。

中国の衛生当局によると、30日時点で、発生地である湖北省での死者は204人に増加、中国国内の感染者数は9692人となった。国外では、22カ国・地域で129人の感染が確認されているが、死者は出ていない。

イタリアのコンテ首相は、同国で初めて中国人旅行者2人の感染が確認されたことを受け、中国への航空便の運航を全面的に停止すると発表。他のほとんどの国よりも厳しい対応を取った。

WHOのテドロス事務局長は、中国との取引や渡航の制限は勧告しないと表明した。

しかし、急速に感染が拡大する中、その毒性や感染力の強さについてまだ明確になっていないことから、世界各国で警戒が強まっている。

航空各社の間ではエールフランス、ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)、ルフトハンザ、ヴァージン・アトランティック航空などが中国本土への運航を停止したほか、減便する動きも出ている。

アメリカン航空の操縦士らは中国便の即時運航停止を求めて訴訟を提起した。

オーストラリアの運輸労働者組合(TWU)は31日、中国からの全便を直ちに運航停止にするよう求めた。

外国政府は自国民を湖北省から退避させ、検疫の措置を取っている。約700人が帰国を望んだ韓国では、自国民の退避に向け計画される4便のうち最初の便が、金浦国際空港に到着。帰国者の症状の有無にかかわらず、全員に14日間の検疫措置を行う方針だ。

感染拡大による中国経済への影響懸念から世界の株式市場は30日に急落した。ただ、WHOが中国の対応を評価したことを受けて31日にはやや落ち着きを取り戻している。

WHOは30日開いた緊急会合で、国際的な公衆衛生上の緊急事態を宣言した。WHOのテドロス事務局長は同日夕の記者会見で、中国の対応を評価した上で、より脆弱な医療制度の国に感染が拡大する可能性への懸念から緊急事態を宣言したと説明した。

中国の張軍国連大使は30日、WHOの緊急事態宣言について精査していることを明らかにした。

「われわれはウイルスとの戦いで依然として非常に重要な段階にある。国際的な結束は極めて重要であり、すべての国が責任ある行動を取るべきだ」と述べた。

また「他国の懸念は理解するが、WHO事務局長の見解にも耳を傾けるべきだ。彼は中国の取り組みを全面的に信頼していると述べた」と指摘。「過剰に反応して悪影響が広がる可能性」を回避することが重要と語った。

中国外務省の報道官は31日、WHOの緊急事態宣言を受け、中国は新型コロナウイルスとの戦いに勝利する自信と能力を有していると述べた。

同報道官は、世界および地域の公衆衛生上の安全維持に向け、引き続きWHOや他国と協力していくとも語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:闇に隠れるパイロットの精神疾患、操縦免許剥奪

ビジネス

ソフトバンクG、米デジタルインフラ投資企業「デジタ

ビジネス

ネットフリックスのワーナー買収、ハリウッドの労組が

ワールド

米、B型肝炎ワクチンの出生時接種推奨を撤回 ケネデ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中