最新記事

貿易戦争

トランプ、WTOの紛争処理機能を止める 委員たったの1人に

2019年12月11日(水)11時07分

世界貿易機関(WTO)の紛争処理手続きが10日、委員の欠員によって機能不全に陥った。ジュネーブのWTO本部で9日撮影(2019年 ロイター/DENIS BALIBOUSE)

世界貿易機関(WTO)の紛争処理手続きが10日、委員の欠員によって機能不全に陥った。各国の貿易紛争を解決する役割を担う上級委員会(最高裁に相当)の委員2人がこの日に任期切れを迎えたが、米国が補充に反対しており、審議ができなくなったため。

上級委の定員は本来7人だが、米国が過去約2年にわたり委員の新たな選任を拒否し続けた結果、委員の数は審理に必要な最低人数となる3人にまで減少。11日以降は1人になり、新規の紛争案件は処理できなくなる。

米国は、中国政府による産業補助金や知的財産権の侵害といった問題で、WTOが疑わしきは罰せずという原則に基づき中国に有利な判断を下したことを問題視している。

今後は、トランプ米大統領が導入した鉄鋼関税に関する米中の紛争など、主要な貿易紛争の審議がストップする。

トランプ政権で通商代表部の法務担当を務めたスティーブン・ボーン氏は、今後は多くの貿易紛争が各国交渉官によって解決されるだろうと指摘。

一方、欧州連合(EU)のWTO大使は9日、上級委の機能不全はルールではなく力によって経済関係が構築されるリスクをもたらすと懸念を示した。

WTOのアゼベド事務局長は、上級委問題の「恒久的解決」策を見いだすための努力を即時開始すると明言した上で、加盟国に対し世界経済を阻害するような一方的対応を控えるよう要請した。個別の国の名指しは避けた。

また来年6月にカザフスタンで開催予定の第12回WTO閣僚会議(MC12)に向け、漁業補助金などの問題で結論が得られると期待していると述べた。

梶山弘志経産相は11日、談話を発表し、上級委で審理に必要な定員を下回るという「WTOルールが想定していなかった事態」により「紛争案件が解決されない事態が生じ得る」と懸念を示した。その上で「上級委の機能の早期回復に向けて、WTO加盟国全体で早急に取り組むことが不可欠。日本はこれまでも提案を出すなど、積極的に議論を行ってきたところであり、引き続き貢献していく」と述べた。

*内容をさらに追加して再送します。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20191217issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

12月17日号(12月10日発売)は「進撃のYahoo!」特集。ニュース産業の破壊者か救世主か――。メディアから記事を集めて配信し、無料のニュース帝国をつくり上げた「巨人」Yahoo!の功罪を問う。[PLUS]米メディア業界で今起きていること。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

IBM、コンフルエントを110億ドルで買収 AI需

ワールド

EU9カ国、「欧州製品の優先採用」に慎重姿勢 加盟

ビジネス

米ネクステラ、グーグルやメタと提携強化 電力需要増

ワールド

英仏独首脳、ゼレンスキー氏と会談 「重要局面」での
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    死刑は「やむを得ない」と言う人は、おそらく本当の…
  • 10
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中