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欧米先進国では富裕層の高校生でもアルバイトに熱心な理由

2019年12月18日(水)16時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

日本のデータで見ると、社会階層が下の生徒ほどバイトの実施率は高い傾向にある。社会階層スコア(世帯収入や両親の学歴などをもとに算出)に依拠して生徒を4つのグループに分け、バイトの実施率を出してみると、最も下の群(下層)は13.7%、最も上の群(上層)は3.9%だ。しかしイギリスだと下層が22.1%、上層が21.4%で階層差がほとんどない。イギリスの上層は、日本の下層よりもバイト実施率が高いのも興味深い。

切羽詰まった経済的理由とは違う、社会勉強の類のバイトが多いのだろう。<図1>は、15歳のバイト実施率の階層差をグラフにしたものだ。

data191218-chart02.jpg

日本は明らかに「下層>上層」で、経済的理由によるバイトが大半であると思われる。対して欧米諸国では階層差は小さく、イギリスやスウェーデンではほぼない。ノルウェーでは、貧困層より富裕層の生徒の方がバイトをしている。

繰り返すが、バイトの意味合いが異なるのだろ。「社会勉強を兼ね、修学旅行の費用を自分で稼がせてください」という提案に戸惑う保護者もいるだろうが、海外ではすんなり受け入れられるはずだ。

高校の専門学科では、就業体験をもって実習に替えることができる(高等学校学習指導要領)。普通科でも就業体験を重視することになっているが、目的が明確な一定期間のアルバイトを単位認定することはできないだろうか。

選挙権付与年齢が18歳に下げられ、成人年齢も20歳から18歳に下げられることが決まった。高校生活において、社会との接点をもっと増やしてもいい。もちろん学業に支障が及ぶほどの児童労働は、社会の力で排除されねばならない。しかし、貧困対策を強調する余り、「働くこと=可哀想」というイメージを定着させるのは良くない。

<資料:OECD「PISA 2015 Results STUDENTS' WELL-BEING VolumeⅢ」

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