最新記事

北朝鮮情勢

「平和に年末を迎えたいなら譲歩せよ」──ビーガン代表も警戒する北の挑発

South Korea Asks U.S. to Push On for Peace as North's Deadline Set to Pass

2019年12月17日(火)17時05分
トム・オコナー

韓国の文大統領は、訪韓中のビーガン北朝鮮担当特別代表に北との和平推進を要請した(12月16日) Yonhap/REUTERS

<韓国がいくらアメリカに期待をかけても、自分が作った年末の期限に向けて威嚇をエスカレートさせているのは北朝鮮のほうだ>

韓国政府は12月16日、アメリカに対し、北朝鮮との和平に一層努力を続けるよう訴えた。背景には、米朝の非核化交渉が、何の進展もないまま、北朝鮮が一方的に決めた「年末の交渉期限」を過ぎようとしていることがある。

韓国の文在寅大統領は12月16日、ソウルでアメリカのスティーブン・ビーガン北朝鮮担当特別代表と会談を行い、「非常に真剣な」議論を交わしたという。文はビーガンに対して、「朝鮮半島の和平プロセスが進展するよう絶えず努力してほしい」と要請した。

会談前、北朝鮮の金正恩党委員長は、自分で決めた年末の期限までに非核化交渉で譲歩するよう、ビーガンの言う「敵対的で必要のない」発言を繰り返した。ビーガンは、「アメリカのほうには期限などない」と強調し、「北朝鮮が今後、大がかりな挑発行為を行ってくる可能性はある」と認めた。

「そうした行為は、朝鮮半島の永続的な平和を実現するうえで、控えめに言ってもまったく役に立たない」と、ビーガンは記者団に言った。「しかし、道は変えられる。まだ遅すぎることはない。私たちと北朝鮮には、できる限りよりよい道を選択する責任がある」

<参考記事>北朝鮮のミサイル発射直後、アメリカはICBMを発射していた
<参考記事>北朝鮮と戦う米軍兵士は地獄を見る

北朝鮮の威嚇は本物か

2019年も残すところ2週間となり、朝鮮半島に平和が訪れるかもしれないという年初の希望は薄れつつある。北朝鮮から見れば譲歩を渋っているトランプ政権に対して金がどんな反応をするかについての懸念もある。「対抗手段」が迫っている、という警告が繰り返されるなか、北朝鮮は西海衛星発射場で7日に続く2度目の「重大実験」を行ったことを12月14日に発表した。

北朝鮮の朴正天(パク・チョンチョン)朝鮮人民軍総参謀長は、14日に実験実施を発表した直後、国営朝鮮中央通信に対して談話を発表し、「わが軍は、最高指導者の決定を行動に移す用意ができている」と述べた。「われわれの力を評価するのは自由だ。だがその威力を本当に知るには、はっきりと目にする必要があるだろう」

パクはさらに、「深刻な対立があるなかで、アメリカならびに他の敵対する国々は、平和な年末を過ごすためにも、われわれを挑発するような言動を慎んだ方がいい」と述べた。

トランプと金が2018年6月にシンガポールで史上初となる米朝首脳会談を行ったあとに、一部が解体された西海衛星発射場は、衛星技術とミサイル技術の開発拠点として知られている。いずれも、国連安保理が北朝鮮に禁じている技術だ。

(翻訳:ガリレオ)

20191224issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

12月24日号(12月17日発売)は「首脳の成績表」特集。「ガキ大将」トランプは落第? 安倍外交の得点は? プーチン、文在寅、ボリス・ジョンソン、習近平は?――世界の首脳を査定し、その能力と資質から国際情勢を読み解く特集です。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル、ガザで40カ所空爆 少なくとも30人死

ワールド

米がウクライナ和平仲介断念も 国務長官指摘 数日で

ワールド

米側の要請あれば、加藤財務相が為替協議するだろう=

ワールド

次回関税協議で具体的前進得られるよう調整加速を指示
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判もなく中米の監禁センターに送られ、間違いとわかっても帰還は望めない
  • 3
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はどこ? ついに首位交代!
  • 4
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、…
  • 5
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 6
    トランプ関税 90日後の世界──不透明な中でも見えてき…
  • 7
    ノーベル賞作家のハン・ガン氏が3回読んだ美学者の…
  • 8
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 9
    今のアメリカは「文革期の中国」と同じ...中国人すら…
  • 10
    トランプが「核保有国」北朝鮮に超音速爆撃機B1Bを展…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 3
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 6
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 7
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 8
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中