最新記事

災害

NZホワイト島噴火、責任の所在はどこに 「予見可能性」が焦点

2019年12月17日(火)10時00分

ニュージーランドのホワイト島噴火では、ロイヤル・カリビアン・クルーズ社が所有するクルーズ船の一部乗客が犠牲になった。同社に責任があるかどうかは、噴火が「予見不能」な自然災害かどうかにかかってくる可能性がある。写真は北部ファカタニで13日撮影(2019年 ロイター/Jorge Silva)

ニュージーランド北島沖の火山島ホワイト島噴火では、ロイヤル・カリビアン・クルーズ社が所有するクルーズ船の一部乗客が犠牲になった。同社に責任があるかどうかは、噴火が「予見不能」な自然災害かどうかにかかってくる可能性がある。これが海事案件に詳しい弁護士の見立てだ。

噴火が起きた9日、クルーズ船「オベーション・オブ・ザ・シー」号の乗客が観光ツアーでホワイト島を訪れていた。まだロイヤル・カリビアンを提訴する動きは出ていないが、法律専門家によると、今後、負傷者や犠牲者遺族が米国の裁判所に訴えを起こす見込みだ。

当時島にいたのは47人で、8人が亡くなったと正式に発表された。20人以上は重度のやけどで治療中。ニュージーランド軍は、現在も行方不明で恐らく死亡したとみられる残る8人の遺体回収作業を継続中だ。

ロイヤル・カリビアンの乗船券には、同社が自然災害や戦争、テロなどによる死亡ないし負傷、または財産の喪失に責任を負わないと記されている。このためマイアミの法律事務所ベーカー・ドネルソンの弁護士ロバート・クリッツマン氏は、同社は噴火が誰にも合理的に予想し得ない異例の出来事だと主張する公算が大きいとの見方を示した。

かつてノルウェージャン・クルーズライン社の顧問を務めたクリッツマン氏は「火山が噴火したとすれば、それは自然現象で、いかなる関係者にも過失がないのは明らかだ」と話した。

ロイヤル・カリビアンは、行方不明の乗客についてや、ホワイト島観光のリスクを乗客に伝えたかどうかについては回答しなかった。ただし、電子メールで「われわれはこの悲劇的な人的犠牲に哀悼の意を持っている。厳しい局面にある家族へのサポートとサービスを続けていく」と述べた。

訴訟になった場合、主な争点はロイヤル・カリビアンが何を知り、また知っておくべきだったかと、火山活動増大の兆候に関してどういった情報を乗客に伝えたかになるだろう。

ネルソン・アンド・フランケルの弁護士で乗客側代理人のカルロス・リナス・ネグレット氏は「(噴火前に)火山性微動や地震が複数回あり、それはモニターされている。全てはロイヤル・カリビアンがどんなことを知っていたか、さらにいつそれを知ったか次第だ」と指摘した。

ロイヤル・カリビアンはウェブサイトで、ホワイト島を世界有数の活発な火山だと描写し、ガスマスクを装着すれば、噴煙や沸き立っている酸性の火山湖といったドラマチックな活動をより間近で見られるとうたっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

香港の大規模住宅火災、ほぼ鎮圧 依然多くの不明者

ビジネス

英財務相、増税巡る批判に反論 野党は福祉支出拡大を

ビジネス

中国の安踏体育と李寧、プーマ買収検討 合意困難か=

ビジネス

ユーロ圏10月銀行融資、企業向けは伸び横ばい 家計
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 5
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 8
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中