最新記事

米朝非核化交渉

「交渉期限」の年末に向けて、北朝鮮はICBM実験に踏み切るか

Trump, Kim Jong Un Face Year-End Deal Pressure, But Head Toward Crisis

2019年12月13日(金)16時00分
トム・オコナー

2019年6月30日、韓国と北朝鮮を隔てる軍事境界線を超えるという歴史は作った2人だが  KCNA/REUTERS

<東倉里で「非常に重要な実験」を行い、「アメリカは自らしっぺ返しを招いた」と国連安保理招集を強い口調で非難した北朝鮮。自ら設定した期限までに、何をするつもりなのか>

北朝鮮の非核化に向けた米朝間の交渉は、10月のストックホルムでの実務者協議が決裂したとされて以来、進展がみられない。年末の「交渉期限」が迫るなか、ドナルド・トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の駆け引きは緊迫の度を増している。

4月に一方的に年末を交渉期限と定めた金正恩は目に見えて苛立ちを募らせており、北朝鮮の国営通信はアメリカに対して、これまで以上に挑発的な警告をするようになっている。マイク・ポンペオ米国務長官が12月10日に国連安保理の会合で、いまだ核兵器や通常兵器の実験を続けている北朝鮮に対する制裁の履行を求めると、北朝鮮は激しく反発した。

朝鮮中央通信は、「我々には失うものは何もない。アメリカが選ぶどんな対抗措置にも報復する用意がある」という外務省報道官の発言を報じた。「アメリカは今回の安保理会合を招集したことで、自らそのしっぺ返しを受けることになった。この会合は、我々が今後どのような道を選ぶかについて明確な決定を下すのに一役買った」

北朝鮮のリ・テソン外務次官は3日、アメリカがどんな「クリスマスプレゼント」を貰えるかは米政府のこれからの態度次第だと警告。苛立ちを募らせている金が、近いうちに核兵器や大陸間弾道ミサイル(ICBM)の実験を再開する可能性が高まっているとも警告した。

「何かやるのは確実」?

シンクタンク、センター・フォー・ザ・ナショナル・インタレストの北朝鮮専門家であるハリー・カジャニスは本誌に対して、「北朝鮮が事態をさらに悪化させるような何かをする可能性は100%であり、問題は彼らが何をするかだ」と語った。

「もしも金が核兵器や軍事目的で使えるレベルのICBM実験を行えば、トランプは金が自分との個人的な約束を破った、自分を侮辱したと感じるだろう」と彼は続けた。「そうなればトランプは、最大限の圧力姿勢に転じるにちがいない。対北朝鮮制裁は強化され、不愉快なツイートも増え、核戦争の脅威も高まることになる。そして今回は2018年の平昌オリンピックのように、双方が歩み寄りの口実にできるイベントもない」

金は2018年の平昌オリンピックを機に韓国の文在寅大統領に接触。これが南北間の和平協議、ひいてはアメリカとの直接対話につながった。だが3回の首脳会談を重ねても米朝が合意に達することができないなか、朝鮮半島がこれまで以上の緊張関係に逆戻りする可能性もある。

だが休戦状態の朝鮮戦争を終結させて歴史をつくりたいトランプと金にとって、それは避けたいところだろう。米国平和研究所の北朝鮮専門家で、2012年から2017年まで米国防総省の上級顧問(北朝鮮政策担当)だったフランク・オウムは、年末が迫るにつれてトランプも金も焦りを感じている可能性が高いと指摘する。

<参考記事>北朝鮮のミサイル発射直後、アメリカはICBMを発射していた
<参考記事>北朝鮮、安倍晋三を「愚かで性悪」と罵倒 外交でも「日本は排除する」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米スナップ、第1四半期は売上高が予想超え 株価25

ビジネス

ロイターネクスト:米経済は好調、中国過剰生産対応へ

ビジネス

日経平均は反発で寄り付く、大幅安の反動で 次第に伸

ビジネス

都区部CPI4月は1.6%上昇、高校授業料無償化や
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中