最新記事

世論調査

対中感情が欧米で悪化──米加は過去最悪(米調査)

60 Percent of Americans View China Unfavorably, Poll Shows

2019年12月9日(月)18時25分
ジェニファー・ドハティ

アメリカだけではなくカナダでも対中感情が過去最悪になったのは「あの事件」の衝撃のせいだ Aly Song-REUTERS

<最も親中的な国はロシア、中東・アフリカ、中南米にも中国びいきの国が多い>

この10年、中国は政治的にも経済的にも影響力を増してきたが、世界の中国に対する視線は必ずしも好意的ではないことが、ピュー・リサーチセンターの調査で明らかになった。

調査は34カ国の3万8000人以上を対象に、今年5月13日から10月2日にかけて行われた。中国を好ましくない国と考えている人の割合(各国の中央値)は41%、好ましい国だと考えている人の割合(同)は40%となった。

国によってばらつきが大きいのもさることながら、中国にとって最も気になる点は、昨年調査と比べ全体的に厳しい見方が増えた点かも知れない。アメリカとカナダでは、好ましくない国だと答えた割合が過去最高となった。

中国に好意的な人の割合は、インドネシアとカナダとスウェーデンでは17ポイント下落した。1年の下落幅としても変動幅としてもそれぞれ過去最大を記録した。アメリカとオーストラリアでは12ポイント下落した一方で、イスラエルとポーランドでは11ポイント増加した。

また、中国を好ましくない国だと答えた人の割合はアメリカで60%、カナダで67%となり、それぞれ過去最高となった。こうした傾向は多くの国で見られ、日本では85%、スウェーデンでは70%、フランスでは62%だった。

原因は貿易戦争やファーウェイ問題

北米地域における反中感情の高まりの原因についてピュー・リサーチセンターはこれまでの報告書で、米中貿易戦争をめぐる緊張だと指摘している。「アメリカでは中国を脅威と見る人が増えている。アメリカ人のほぼ4人に1人(24%)は将来的にアメリカの最大の脅威となる国や団体として中国の名を挙げている。これは2007年の2倍だ」と同センターは、8月に発表した報告書で述べている。

「アメリカ人の中国に対する見方はどんどんネガティブになっている。米中の全般的な緊張の反映だ。中国が台頭してアメリカの利権を脅かすとか、中国は同じ経済ルールに従わず、アメリカは損をしているとか、中国は豊かになればいずれ民主主義へと向かうと思ったのは見当違いだった、などの感情が渦巻いている」と、ペンシルベニア大学現代中国研究センターのジャック・ドリール所長は本誌に語った。

ドリールによれば、カナダでアメリカと類似した結果が出るのはよくあることだが、今回の場合はある事件が対中感情悪化に大きく響いた。昨年末、カナダ当局はアメリカの要請を受けて中国の通信機器大手、ファーウェイ・テクノロジーズの孟晩舟(モン・ワンチョウ)副会長兼最高財務責任者(CFO)を逮捕した。怒った中国は、報復措置として中国在住のカナダ人2人を拘束した。カナダ人が身をもって中国の怖さを感じた事件だ。

<参考記事>中国は「第三次大戦を準備している」
<参考記事>アジア系には家を貸したくない(豪・人種差別調査)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ノルウェーSWF、ガザ関連でさらに6社投資除外

ワールド

ゼレンスキー氏、ロシアの「冷酷な」攻撃非難 「訪米

ワールド

イラン、協力停止後もIAEAと協議継続 「数日中に

ワールド

米特使、イスラエルはレバノン和平計画に従うべき
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 2
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に入る国はどこ?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    AIはもう「限界」なのか?――巨額投資の8割が失敗する…
  • 5
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 6
    恐怖体験...飛行機内で隣の客から「ハラスメント」を…
  • 7
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 8
    40代は資格より自分のスキルを「リストラ」せよ――年…
  • 9
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 10
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 6
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 8
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 9
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 10
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中