最新記事

イギリス

EU離脱は英連合王国の解体の始まり? 独立目指すスコットランド

2019年12月22日(日)12時25分

何世紀も独立を夢見てきたスコットランドの愛国者は、英国のEU離脱(ブレグジット)を、自分たちが王国から離脱するためのチケットだと考えている。写真はスコットランドの旗を掲げる独立支持者。11月2日、スコットランドのグラスゴーで撮影(2019年 ロイター/Russell Cheyne)

2020年1月に欧州連合(EU)から離脱するというジョンソン英首相の公約は、EUよりさらに長い歴史のある連合を、分裂の危機に追い込むかもしれない。イングランド、スコットランド、ウエールズ、北アイルランドという連合王国の解体だ。

何世紀も独立を夢見てきたスコットランドの愛国者は、英国のEU離脱(ブレグジット)を、自分たちが王国から離脱するためのチケットだと考えている。地域政党スコットランド民族党(SNP)のスタージョン党首は近く、独立の是非を問う住民投票の準備に乗り出す見通しだ。

同党は、前週の英総選挙でスコットランドの59議席中、80%に当たる47議席を獲得。2017年の前回選挙から11議席を上積みした。しかし、ジョンソン首相は再度の住民投票を拒否。住民の55%が独立に反対した14年の住民投票で、この問題は解決したとの立場だ。

スコットランド独立は可能なのか。以下で検証する。

住民投票のタイミング

スコットランド独立派は、イングランドとは政治的に分離しつつあり、ブレグジットは憲法上の合意を根本的に変えると主張する。

EUからの離脱を決めた2016年の国民投票では、スコットランド全域で残留派が上回った。ブレグジットによる経済的ダメージが表面化すれば、スコットランドのEU離脱反対派を勢いづかせる可能性がある。

スコットランドが法的に有効な住民投票を再び行うには、英議会の認可が必要となる。スタージョン氏は14年の投票の根拠となったスコットランド法30条に基づき、投票を合法と認めるよう正式に議会に要請する方針だ。

しかし、英政府はいかなる要請も拒否すると主張している。17年に同様の要請が提出された際も却下している。

今回の総選挙の結果次第では、独立派はすぐに住民投票を行うチャンスがあった。SNPが野党・労働党を支援するのと引き換えに、新たな住民投票の実施を要求できたからだ。

次の重要なタイミングは、スコットランド議会の解散期限が来る2021年になりそうだ。SNPが過半数を取れば、政治的、倫理的に新たな住民投票を実施する権利を主張できる。

スコットランド自治政府首相でもあるスタージョン氏は11月、21年の選挙でSNPがスコットランド議会を制すれば、住民投票を実施する「民主的な委任」を付託されたことになると発言している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米9月雇用11.9万人増で底堅さ示唆、失業率4年ぶ

ビジネス

12月FOMCで利下げ見送りとの観測高まる、9月雇

ビジネス

米国株式市場・序盤=ダウ600ドル高・ナスダック2

ビジネス

さらなる利下げは金融安定リスクを招く=米クリーブラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 6
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中