最新記事

英総選挙

離脱強硬派ジョンソン勝利でイギリス「連合王国」解体か

Is This the Last U.K. Election?

2019年12月13日(金)17時05分
ジョシュア・キーティング

北アイルランドの有権者にイギリス残留を望むか、アイルランドへの編入を望むかを尋ねた9月の世論調査では、両者の意見は拮抗していた。しかしそれは10月にジョンソンの離脱協定案が出される前だ。この協定案では、北アイルランドにはEUの関税ルールが適用されることになっているため、経済上はEUに残留し、アイルランドとも行き来できることになる。

トニー・ブレア労働党政権時代の政権顧問が主張するように、「逆説的だが、ジョンソンとブレグジットはアイルランド共和軍(IRA)の独立闘争よりもアイルランド統一に貢献するかもしれない」。

だがイギリス連合王国にはもっと強大な脅威がある。それはイングランド人、特にイングランド人の保守党支持者だ。彼らは英連合を維持することに対する熱意を失くしている。

保守党支持者の変質

今年10月に実施された世論調査で、イングランド人保守党支持者の53%が、例え北アイルランド和平プロセスが白紙になったとしてもブレグジットを支持すると回答した。また77%が、例えスコットランド独立を問う2度目の住民投票に繋がるとしても、ブレグジットを支持すると回答した。つまり保守党は正式名称が「保守統一党」なのに、彼らは、かつてのIRA(アイルランド共和軍)支持者でスコットランド独立派と手を組みそうなジェレミー・コービン労働党首よりも、イギリス「統一」への関心が薄い。

イギリス解体の実現は、まだ遠い先のことようにしか思えるかもしれない。現在の世界で国境線を引き直すのが極めて稀なのは事実だ。しかしイギリスの政治をみていると、単なる空想とはとても思えなくなる。

©2019 The Slate Group

20191217issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

12月17日号(12月10日発売)は「進撃のYahoo!」特集。ニュース産業の破壊者か救世主か――。メディアから記事を集めて配信し、無料のニュース帝国をつくり上げた「巨人」Yahoo!の功罪を問う。[PLUS]米メディア業界で今起きていること。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

GPIF、7―9月期運用益は14.4兆円 株高で黒

ビジネス

市中向け国債発行「定期評価案」が浮上、年央にも再検

ビジネス

ホンダ、通期業績予想を下方修正 半導体不足による生

ワールド

台風25号、ベトナム中部に上陸 フィリピンでの死者
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 6
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 9
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 10
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 8
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中