最新記事

メディカル・ツーリズム

広がる「インドで格安医療」の選択肢 90憶ドル市場へ

India’s Medical Tourism Market Could Reach $9 Billion Next Year Buoyed By Low Cost, High Quality Service

2019年11月27日(水)17時38分
パラシュ・ゴーシュ

インドでは外国人旅行者が英米レベルの医療を半分の費用で受けることができる photographer/iStock.

<先進国と同レベルの医療を半額で、がキャッチフレーズ>

先進国で医療費が高騰するなか、低コストで高品質の医療、健康に関する様々なサービスを提供するインドのメディカルツーリズム(医療観光)の人気が高まっている。

インド商工会議所とアーンスト・アンド・ヤング社の共同報告によれば、その市場規模は来年までに90億ドルに達する見込み。2015年の時点と比べると3倍に拡大している。

報告書によれば、医療を目的にインドを訪れるツーリストの大半は、デリー、ムンバイ、チェンナイ、バンガロール、ハイデラバード、コルカタといった大都市に滞在している。2015年にインドが受け入れたメディカルツーリストは約23万4,000人だったが、2017年には2倍以上の49万5,056人に増えた。

インドでは外国人旅行者がイギリスやアメリカと同じレベルの治療を受けることができ、費用は約半分だ。

医療目的の旅行者の約半数は、隣国のバングラデシュからやってくるが、残りのほとんどは東南アジア、中東、アフリカから。アメリカ、カナダ、ヨーロッパからのメディカルツーリストはまだそれほど多くないが、ここ数年、増え続けている。

インドには、国際的な医療評価機関として権威ある外来診療プログラム(JCI)の認証を取得した病院が38カ所ある。インドの病院評価機関も619の病院を認証している。さらに、術後死亡率はアメリカでは1.9%だが、インドでは約1.4%だ。

臓器移植を求める患者も

メディカルツーリズムのコンサルティング会社「ペイシェンツ・ビヨンド・ボーダーズ」の報告によれば、臓器移植、特に肝臓、腎臓、膵臓の手術を希望する患者にとってインドは主要目的地の1つだ。

インド国内でも、各地が外国からのメディカルツーリストを求めて競争している。コルカタ市は、国境が近いバングラデシュから多くの旅行者を集めている。

妻の治療のためにコルカタを訪れているバングラデシュからの旅行者は、コルカタを選んだ理由を説明した。

「バングラデシュには、十分に発達した医療インフラがない」と、彼は言う。「だからいい治療をいい施設で受けたければ、ここに来るしかない。それに移動時間は短く、コストも手頃だ」

インド西部ゴア州のプラモド・サワント州首相は、医療の水準を上げることで、メディカルツーリズムを拡大する計画を立てている。

「治療のためにゴアを訪れる旅行者が適切な治療を受けられず、だまされることもる」と、サワントは言う。「医療観光を促進するためには、いくつかの法律を改正する必要がある」

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:労災被害者の韓国大統領、産業現場での事故

ワールド

高市首相、中国首相と会話の機会なし G20サミット

ワールド

米の和平案、ウィットコフ氏とクシュナー氏がロ特使と

ワールド

米長官らスイス到着、ウクライナ和平案協議へ 欧州も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナゾ仕様」...「ここじゃできない!」
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 5
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    【銘柄】いま注目のフィンテック企業、ソーファイ・…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中