最新記事

米中貿易戦争

米中通商交渉で情報錯綜 追加関税の段階撤廃めぐりトランプ政権内で意見対立?

2019年11月8日(金)14時13分

米中は7日、通商協議の「第1段階」の合意の一環として、双方が貿易戦争の過程で発動した追加関税を段階的に撤廃することで合意したはずだが……。写真は上海で7月30日撮影(2019年 ロイター/Aly Song)

米中は7日、通商協議の「第1段階」の合意の一環として、双方が貿易戦争の過程で発動した追加関税を段階的に撤廃することで合意した。

中国商務省の高峰報道官は7日の会見で、中国と米国がここ2週間の間に、双方が貿易戦争の過程で発動した追加関税を段階的に撤廃することで合意したと明らかにした。

米政府高官も同日、匿名を条件に、第1段階の合意の一環として関税撤廃が計画されていることを確認した。

ただ、追加関税の段階的撤廃には、ホワイトハウス内外の助言役から強い反発の声が出ている。米政権内に強い反対論があるとのロイターの報道を受け、米主要株価指数は上げ幅を縮小した。

ホワイトハウスのグリシャム報道官はFOXニュース・チャンネルの番組で「中国と近く合意に達することに非常に楽観的だ」と述べた。

一方、ナバロ大統領補佐官はFOXビジネス・ネットワークのインタビューで「第1段階の合意の条件としてこれまでに課した関税を一部でも撤廃するという合意は現時点ではない」と言明した。

トランプ米大統領に助言しているハドソン研究所の中国戦略専門家マイケル・ピルズベリー氏は「関税の段階的撤廃に関する具体的な合意はない」と指摘。「米側はどの関税をいつ撤廃するかについて曖昧(あいまい)にしてきた。中国側は多少の希望的観測を抱いており、国内の強硬派に対し、将来的に関税が撤廃されるとの安心感を与えたいようだ」と述べた。

米中の第1段階の通商合意には、米側が12月15日に発動する予定の携帯電話やラップトップPCなどの中国製品を対象とする追加関税を取り下げることが盛り込まれているとみられている。

中国商務省の高報道官は「ここ2週間、双方の交渉代表らが、様々な核心的事項の適切な解決に向け真剣かつ建設的に討議した」とし「交渉の進展に伴い、追加関税を段階的に撤廃することで合意した」と述べた。

中国交渉団に近い筋によると、中国は米国側に「すべての追加関税をできるだけ早く撤廃」するよう要求したとされる。

高報道官は第1段階の通商合意が成立するためには、両国が互いに発動している追加関税を同時に撤廃しなければならないとし、撤廃は、合意を成立させるための重要な条件と表明。

撤廃する追加関税の割合は同じでなければならず、撤廃する対象品目数は交渉可能とした。

「貿易戦争は関税で始まっており、関税撤廃で終わらせるべきだ」と述べた。

一方、国営新華社は7日遅く、中国税関総署と農業農村省が米国産鶏肉の輸入禁止措置の解除を検討していると報じており、米中合意への楽観論を後押しする可能性がある。中国は鳥インフルエンザが流行した影響で2015年1月以来、米国産の鶏肉と卵の輸入を全面的に禁止している。

第1段階の通商合意の署名はトランプ米大統領と習近平中国国家主席が行うとされるが、その時期も場所も情報が錯綜(さくそう)している。

高報道官は、署名の時期や場所についてコメントを差し控えた。

*内容を追加しました。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20191112issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

11月12日号(11月6日発売)は「危ないIoT」特集。おもちゃがハッキングされる!? 室温調整器が盗聴される!? 自動車が暴走する!? ネットにつなげて外から操作できる便利なスマート家電。そのセキュリティーはここまで脆弱だった。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ワシントンの州兵銃撃、1人が呼びかけに反応 なお

ビジネス

アングル:ウクライナ、グーグルと独自AIシステム開

ワールド

韓国大統領、クーパン情報流出で企業の罰則強化を要求

ワールド

豪政府支出、第3四半期経済成長に寄与 3日発表のG
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯終了、戦争で観光業打撃、福祉費用が削減へ
  • 2
    【クイズ】1位は北海道で圧倒的...日本で2番目に「カニの漁獲量」が多い県は?
  • 3
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 4
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 9
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 10
    600人超死亡、400万人超が被災...東南アジアの豪雨の…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中