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米EU大使、弾劾調査で認める「ウクライナ支援の交換条件と把握していた」

2019年11月6日(水)11時00分

米国のソンドランド駐欧州連合(EU)大使はトランプ大統領の弾劾調査を進める下院で追加証言を行い、ウクライナ政府高官に対し、同政府が米側の要求する「反汚職」に関する声明を出すまでは、保留中の軍事支援が実施されることはないと伝えていたと認めた。写真は非公開の委員会で証言後、議会を出るソンドランド氏。10月28日、ワシントンで撮影(2019年 ロイター/Siphiwe Sibeko)

米国のソンドランド駐欧州連合(EU)大使は、トランプ大統領の弾劾調査を進める下院で追加証言を行い、ウクライナ政府高官に対し、同政府が米側の要求する「反汚職」に関する声明を出すまでは、保留中の軍事支援が実施されることはないと伝えていたと認めた。

ソンドランド氏は既に10月に証言しているが、記憶が「蘇った」としてウクライナ疑惑に関する新たな事実を4日に提示。民主党が多数派を占める下院の3委員会による弾劾調査のきっかけとなった内部告発を裏付ける格好となった。

トランプ氏がバイデン前副大統領親子を捜査するようウクライナ政府に圧力をかけたとされる問題で、複数の関係者はこれまで、捜査はトランプ氏が来年の大統領選を有利に進める狙いがあったようだと証言しており、ソンドランド氏の証言はこういった見方も裏付けた。

バイデン氏は民主党の大統領有力候補。息子ハンター氏は、汚職捜査の対象となったウクライナのガス会社の役員だった。

ソンドランド氏は9月にテイラー駐ウクライナ代理大使へのテキストメッセージで、トランプ氏が対ウクライナ軍事支援の「交換条件はない」ことを明確にしていると述べていた。

ただ、新たな証言で同氏は、保留となっていた約4億ドルの軍事支援について「納得のいく説明がなかった」ことから、ウクライナ政府が捜査を公にすべきとするトランプ氏の要求と関係していると9月初めまでに認識したと明かした。

ソンドランド氏はこれまで、捜査がバイデン親子を標的にしたものだと当初は認識していなかったと証言している。

ソンドランド氏は、ウクライナの大統領顧問に対し「米国の支援は、これまで何週間も両国が協議してきた反汚職の公式声明をウクライナ政府が出すまでは再開される可能性は低い」と伝えたことを明らかにした。

下院の3委員会は、これまで概ね非公表で弾劾調査を進めてきたが、今週に入って非公開証言の内容を初めて公表。3委員会は公開証言を来月開始するために準備を進めている。

ソンドランド氏は、テイラー氏を含む当局者が証言したのを受け、追加で証言を行った。

下院民主党は、9月にウクライナ担当特別代表を辞任したカート・ボルカー氏の証言内容も公表。トランプ氏の顧問弁護士であるジュリアーニ氏がいかに米国とウクライナの連絡係を果たしたかについて詳しく証言した。

これまで証言した関係者らは、ボルカー、ソンドランド両氏とペリー米エネルギー長官が、トランプ氏とウクライナ政府当局者との非公式な対話チャンネルの役割を担う「スリー・アミーゴ」として知られていたと明らかにしている。

ボルカー氏は10月3日、下院の3委員会で8時間超にわたり証言した。

12月1日付で退任することが決まっているペリー長官は、これまでのところ証言を拒否している。

[ワシントン 5日 ロイター]


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