最新記事

シリア情勢

米軍撤退で追い詰められたクルド人がシリア、ロシアと手を組んだ

Kurds Strike Deal with Putin and Assad in Syria as Trump Criticized

2019年10月15日(火)15時50分
タレク・ハダド

シリア北東部では、トルコによる攻撃で大勢の一般市民が死亡しているおそれがあり、国連は13万人以上の民間人が住むところを失ったと推定している。それでも、トルコが攻撃を緩める気配はない。

かつてIS掃討を目指す有志連合の米特使を務め、トランプのシリア戦略に抗議して昨年12月に辞任したブレット・マガークは、現在の状況は「大惨事」だとし、クルド人勢力を見捨てたトランプの決断は「軽率で無慈悲だった」と批判した。「同盟相手の運命を考えも計画もなしに敵対勢力の手に委ねるのは、恥ずべきことだ」

「シリアは途方もない規模の人道危機に見舞われている」とマガークはツイッターに投稿した。「アサドは報いを受けるべき戦争犯罪人なのに、アメリカがISのカリフ制国家を壊滅させた結果、シリアの3分の1を安定させ、シリアがそれを手に入れた」

「犠牲を払ったのはSDFで、彼らはISとの戦いで1万1000人近い戦闘員を失った。トランプは彼らがただ『自分たちの土地を守るために戦っただけ』と言ったが、それは間違いだ。彼らはアメリカの要請を受けて戦っていたのだ」

「トランプは、軍を招集してISのような敵と戦うのは簡単なことだと思っているようだが、それは違う。何年もの時間がかかる大変なことだ。そして今回、IS掃討という歴史的な成功が、一人の外国人指導者の軽率で無慈悲な決定によってわずか6日で失われてしまった」

多大な犠牲を払ったIS掃討戦が無駄になっただけではない。今やシリア北東部ではトルコ軍とシリア政府軍という敵対する正規軍同士が対峙しかねない情勢だ。もしシリア政府軍がNATOに所属するトルコを攻撃すれば、NATO諸国は防衛する義務がある。

民主党のチャック・シューマー上院院内総務は13日、議会民主党が近く、クルド人勢力を守るために、トランプに対してシリアからの米軍撤退の決定を「取り消す」よう求める決議案を議会に提出する予定だと明らかにした。

(翻訳:森美歩)

20191022issue_cover200.jpg
※10月22日号(10月16日発売)は、「AI vs. 癌」特集。ゲノム解析+人工知能が「人類の天敵」である癌を克服する日は近い。プレシジョン・メディシン(精密医療)の導入は今、どこまで進んでいるか。

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

エルサルバドルへの誤送還問題、トランプ氏「協議して

ワールド

米民間セクター代表団、グリーンランドを今週訪問 投

ビジネス

伊プラダ第1四半期売上高は予想超え、ミュウミュウ部

ワールド

ロシア、貿易戦争想定の経済予測を初公表 25年成長
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中