最新記事

韓国

「GSOMIA破棄で損害を被るのは韓国」米有識者が断言

2019年10月1日(火)15時10分
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト) ※デイリーNKジャパンより転載

先月24日、国連総会でスピーチする韓国の文在寅大統領 Lucas Jackson-REUTERS

<韓国が日本と歴史問題で対立すれば、日米韓の協調体制がダメージを受け、韓国がその責任を問われかねない>

共同通信によれば、28日までにソウルで海外メディアと会見した韓国政府高官は、「日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA=ジーソミア)は、北朝鮮のミサイル発射探知のため韓国以上に日本が必要としていると強調した」という。

GSOMIAの破棄を宣言し、米国から繰り返し不満を表明されるなど外交的な立場がいっそう苦しくなっている韓国だが、この高官の弁は、苦し紛れの強がりにしか聞こえない。

実際のところ、日韓のGSOMIAが締結された2016年当時、この協定締結をより望んでいたのは韓国側なのだ。韓国国防省は当時、GSOMIA締結の必要性について次のように強調していた。

「高度化、加速化、現実化している北の核・ミサイルの脅威などに対し、日本の情報能力を活用することで、われわれの安保利益を高めることができる。北の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)に関連する情報を得るのに実質的に役立つと期待される」

現在建造中とされる北朝鮮の弾道ミサイル潜水艦は、東海岸の海軍基地に配備されると見られている。ということは、朝鮮半島有事には日本海に出撃してミサイルを発射する可能性が高いわけだが、そうなると、韓国は自軍レーダーの探知範囲の外から撃たれる形になる。だから、日本海を常時監視している日本の情報が必要だということだ。

そのような経緯を忘れたのか忘れた「ふり」でもしているのか、件の高官の発言はあまりに軽薄だ。

そんな具合だから、米国から韓国への警告の声も止まない。

参考記事:「韓国外交はひどい」「黙っていられない」米国から批判続く

米ヘリテージ財団の創設者で、トランプ米大統領とも近いとされるエドウィン・フールナー氏は27日、韓国紙・朝鮮日報とのインタビューで、「GSOMIAを破棄し、対立する状況が続けば、最終的に損害を被るのは韓国だ」と断言している。同紙によれば、フールナー氏は人差し指、中指、薬指を立て「韓米日はこのように緊密な関係を維持すべきだ。中国とロシアの面前で韓日が歴史問題で引き続き争うよりも、南シナ海問題など共同の利害がある分野で協力できることを見いだしてほしい」と述べたという。

これは翻して言うと、韓国が歴史問題を理由にGSOMIAに象徴される3国の協力を傷つければ、それは「南シナ海問題など共同の利害」に対するダメージにつながり、韓国がその責任を問われかねないという意味の警告と言える。

GSOMIAを維持しても破棄しても、歴史問題を巡る日韓対立で、どちらかが有利になったり不利になったりすることはない。いや、米国の機嫌を損ねた分だけ、韓国の方が不利だ。文在寅政権は早くそのことを認め、破棄の決定を撤回した方が身のためなのだが、そのことを文大統領は果たして理解しているのだろうか。

参考記事:「何故あんなことを言うのか」文在寅発言に米高官が不快感

[筆者]
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト)
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)、『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)、『北朝鮮ポップスの世界』(共著、花伝社)など。近著に『脱北者が明かす北朝鮮』(宝島社)。

※当記事は「NKNews」からの転載記事です。

dailynklogo150.jpg



ニューズウィーク日本版 イラン革命防衛隊
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年3月24号(3月17日発売)は「イラン革命防衛隊」特集。イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏経常黒字、1月は379億ユーロへ拡大 増加

ビジネス

ECB、利下げより利上げの可能性高い=仏中銀総裁

ビジネス

英2月財政赤字、予想大幅に上回る イラン戦争が重し

ワールド

在宅勤務や航空機利用自粛、エネ高騰対応でIEAが提
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 ──「成功」が招く自国防衛の弱体化
  • 4
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 5
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 8
    原油高騰よりも米国経済・米株市場の行方を左右する…
  • 9
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 10
    「嘘でしょ!」空港で「まさかの持ち物」を武器と勘…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 5
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 6
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 9
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 10
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中