最新記事

イスラム過激派

バグダディは海の藻屑と消えたが ISという化け物は必ず蘇る

2019年10月29日(火)10時55分

ISの脅威残ると各国指摘

ロシア大統領府のペスコフ報道官は、米国から急襲作戦について事前通知があったかどうかについて回答を避けた。トランプ氏はバグダディ容疑者の死亡を発表した際、ロシアが自国の領空を開放するなど「素晴らしい扱いをわれわれは受けた」と述べていた。

マクロン仏大統領は、バグダディ容疑者の死はISにとって大きな打撃だが、「このテロ組織を打ち負かすための闘いは継続している」と語った。

ジョンソン英首相は「ISの殺人的で野蛮な活動を決定的に終わらせるため、有志連合パートナーと協力する」と述べた。

米政府はこの日、シリア北部での別の作戦で、ISの報道担当者アブ・アル・ハッサン・アル・ムハジル氏を殺害したと確認した。

フィリピンのロレンザーナ国防相は、バグダディ容疑者の死亡はISにとって打撃になるとする一方、ISの世界的な影響を考えれば、打撃は一時的なものに過ぎないと指摘。「誰かがバグダディ容疑者に取って代わるだろう」と警告した。オーストラリアのモリソン首相も「ISはいくつもの頭を持つお化けのようなもの。一つ切り落としても他の頭が確実に浮かび上がってくる」とした。

トルコのチャブシオール外相は、米軍がバグダディ容疑者に対する急襲作戦を展開した夜、米・トルコ政府が緊密に連絡を取り、情報を共有していたと明らかにした。

外相は記者会見で「IS指導者殺害に向けた急襲作戦に先立ち、トルコと米政府は情報を共有し、意見を交換していた。トランプ大統領がトルコに謝意を示したのはそのためだ」と語った。トルコがこれまでにIS兵士4000人超を制圧したとも述べた。

バグダディ容疑者の消息を巡っては、これまで長年その行方を追っていたイラク情報当局が昨年2月に居場所の特定につながる有力な情報を得ていたことが、イラクの安全保障当局者2人の話で判明した。

シリアの油田も焦点に

エスパー米国防長官は28日、米国が支援しているシリアの武装勢力「シリア民主軍(SDF)」から収入源の油田を奪おうとする動きがあれば、ISであれ、ロシアやシリアが支援する勢力であれ、米軍は「圧倒的な力」で阻止するとの考えを示した。

ただ、トランプ氏は、今回の急襲作戦によってシリア北部から米軍を撤収する方針が変わることはないと表明した。

※情報を追加しました。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20191105issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

10月29日発売号は「山本太郎現象」特集。ポピュリズムの具現者か民主主義の救世主か。森達也(作家、映画監督)が執筆、独占インタビューも加え、日本政界を席巻する異端児の真相に迫ります。新連載も続々スタート!


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独経済団体、半数が26年の人員削減を予想 経済危機

ワールド

中国軍、台湾周辺で実弾射撃伴う演習開始 港湾など封

ビジネス

韓国クーパン、顧客情報大量流出で11.8億ドルの補

ワールド

尹前大統領の妻、金品見返りに国政介入 韓国特別検が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中