最新記事

「未来のための金曜日」

「気候変動が続くなら子どもは生まない」と抗議し始めた若者たち

Hundreds of Young People Pledge Not to Have Children for the Environment

2019年9月20日(金)16時30分
ロージー・マコール

欧州移民危機で、2015年にシリアからヨーロッパに移り住んだ難民は100万人。それが2019年6月までに670万人に増えた。だが国連の予想では、2050年までに気候変動の影響で国内外への移住を迫られる人の数は2500万人から10億人にものぼる見通しだ。

またオンタリオ在住のアレクサンドラ・ピーターソンは、こう書く。「将来の世代が、今の世代や政府がつくり出した問題のツケを払わされるのはおかしい」

近年では、家族を持たない選択をする人が増えている。アメリカでは4年連続で出生率が下落し、2018年はこの32年で最も低い水準だった。晩婚化や(結婚しない人も増えている)経済的な問題などさまざまな理由があるが、気候変動もその一因だ。

ニュースサイトのビジネスインサイダーが3月に実施した調査では、「子どもを持つにあたっては、気候変動が子どもに及ぼす(命を脅かす可能性もある)悪影響を考慮に入れるべき」という考え方について、「大いに同意」「同意」「やや同意」と回答したアメリカ人が全体の3割近くにのぼった。ミレニアル世代の回答者に絞るとその割合はさらに高く、18~29歳の38%近く、30~44歳では24%が同意した。

若い世代が議論の中心に

気候変動が未来の子どもたちにもたらす可能性のある問題は、健康問題や社会経済的な問題だけではない。子どもが増えればより多くの温室効果ガスが発生し、気候変動にまつわる問題がさらに悪化するという厳しい事実を指摘する声も多くある。

2009年に実施されたある調査では、先進国に暮らす人が子どもを1人持つごとに、その人の二酸化炭素排出量は6倍に増える可能性がある。アメリカでは1人増えるごとに、二酸化炭素の排出量が約9441トン増えるという。

また2017年に実施された調査では、個人が最も効果的に二酸化炭素の排出量を減らす方法は、家族を持つ際に子どもの数を1人減らすことだという結果が示された。その次に効果的なのが、車を売る、長距離移動を控える、ベジタリアンになるなどの方法だ。

リムが#NoFutureNoChildren運動を立ち上げる以前にも、地球を救い、将来の世代を気候変動の悪影響から救おうとする考えに基づくバース・ストライキは(イギリスとアメリカで)あった。だが今回、わずか数日で1000人もの若者が生まないことに賛同した事実は、気候変動をめぐる議論で若者が中心的な役割を果たし始めたことを象徴している。

(翻訳:森美歩)

climatelogo03.jpgThis story originally appeared in the Columbia Journalism Review. It is republished here as part of Newsweek Japan's partnership with Covering Climate Now, a global collaboration of more than 220 news outlets to strengthen coverage of the climate story.

190924cover-thum.jpg※9月24日号(9月18日発売)は、「日本と韓国:悪いのはどちらか」特集。終わりなき争いを続ける日本と韓国――。コロンビア大学のキャロル・グラック教授(歴史学)が過去を政治の道具にする「記憶の政治」の愚を論じ、日本で生まれ育った元「朝鮮」籍の映画監督、ヤン ヨンヒは「私にとって韓国は長年『最も遠い国』だった」と題するルポを寄稿。泥沼の関係に陥った本当の原因とその「出口」を考える特集です。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米債市場の動き、FRBが利下げすべきとのシグナル=

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税コストで

ビジネス

米3月建設支出、0.5%減 ローン金利高騰や関税が

ワールド

ウォルツ米大統領補佐官が辞任へ=関係筋
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 7
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中