最新記事

選挙

イスラエル総選挙、ネタニヤフ首相の与党過半数割れへ 連立交渉は難航か

2019年9月19日(木)07時46分

大接戦となったイスラエルのやり直し総選挙(国会定数120)は約90%の開票が終了し、ネタニヤフ首相(右)は過半数を確保できない見通しになった。エルサレムの投票所で代表撮影(2019年 ロイター)

大接戦となったイスラエルのやり直し総選挙(国会定数120)は18日、約90%の開票が終了し、ネタニヤフ首相は過半数を確保できない見通しになった。

現時点でネタニヤフ首相率いる右派の与党リクードは55議席を確保し、過半数を割り込んでいる。ただ、いずれの勢力も過半数を占める連立政権に必要な61議席は確保できない見込みだ。

連立政権樹立に向けた交渉が今後の焦点となるが、交渉は難航し、数週間かかる可能性がある。

17日に投開票された総選挙では、リクードとガンツ元軍参謀総長が率いる中道野党連合「青と白」の接戦となった。

ガンツ氏は18日、出口調査に基づけばネタニヤフ氏は敗北したもようで、青と白は「使命を果たした」ようだと表明。国家を統一する政府の樹立に向けて取り組むと述べた。ただ、公然と勝利宣言することはせず、正式な開票結果を待つ考えを示した。

一方、ネタニヤフ氏はリクードの会合で演説した際、勝利宣言は行わず、敗北も認めなかった。最終的な開票結果を待つと述べ、「強いシオニスト政府」の樹立に向けて取り組むと語った。

地元テレビの著名アナウンサーは「ネタニヤフ氏は敗北したが、ガンツ氏も勝利していない」と指摘した。

こうした中、極右「わが家イスラエル」を率いるリーベルマン元国防相が連立交渉の行方を左右する可能性がある。

リーベルマン氏は「選択肢はただ1つ。わが家イスラエルとリクード、青と白で構成する、国を挙げたリベラルで包括的な政権だ」と述べた。

リーベルマン氏はリクードの従来の連立相手であるユダヤ教超正統派の政党との連立は拒否する考えをこれまで示しており、宗教政党が日常生活に及ぼす影響を弱めることなどを掲げて選挙戦を戦った。

ガンツ氏はネタニヤフ氏が汚職疑惑で起訴された場合、同氏と協力して連立政権を樹立する可能性を否定している。

今回の選挙でネタニヤフ氏は、4月の前回選挙後の連立協議が失敗に終わったことが響いたほか、汚職疑惑も痛手となった。

ネタニヤフ氏が選挙後の演説で、「この国の多くの人」の意見を反映する「強いシオニスト政府」の樹立に向けて取り組むと語ったことは、リクードを軸とする政権に現時点で加わっていないユダヤ系政党との協力に扉を開くものとみられる。ガンツ氏がアラブ系政党の暗黙の協力を得て連立政権樹立を試みる可能性をけん制する狙いもありそうだ。

*内容を追加しました。

[エルサレム 18日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20240423issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月23日号(4月16日発売)は「老人極貧社会 韓国」特集。老人貧困率は先進国最悪。過酷バイトに食料配給……繫栄から取り残され困窮する高齢者は日本の未来の姿

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏貿易黒字、2月は前月の2倍に拡大 輸出が回

ビジネス

UBS、主要2部門の四半期純金利収入見通し引き上げ

ビジネス

英賃金上昇率の鈍化続く、12─2月は前年比6.0%

ビジネス

日産、EV生産にギガキャスト27年度導入 銅不要モ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無能の専門家」の面々

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 5

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 6

    キャサリン妃は最高のお手本...すでに「完璧なカーテ…

  • 7

    韓国の春に思うこと、セウォル号事故から10年

  • 8

    中国もトルコもUAEも......米経済制裁の効果で世界が…

  • 9

    中国の「過剰生産」よりも「貯蓄志向」のほうが問題.…

  • 10

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 3

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入、強烈な爆発で「木端微塵」に...ウクライナが映像公開

  • 4

    NewJeans、ILLIT、LE SSERAFIM...... K-POPガールズグ…

  • 5

    ドイツ空軍ユーロファイター、緊迫のバルト海でロシ…

  • 6

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 7

    ロシアの隣りの強権国家までがロシア離れ、「ウクラ…

  • 8

    金価格、今年2倍超に高騰か──スイスの著名ストラテジ…

  • 9

    ドネツク州でロシアが過去最大の「戦車攻撃」を実施…

  • 10

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中