最新記事

ジェンダー

女性が経済的に不利なのは、お金の話を語ることがタブーだから

The Last Taboo

2019年9月4日(水)19時20分
サリー・クロウチェック(女性向け資産運用会社エルベストCEO)

magw190904_Money.jpg

賃金格差是正を求める50年代のデモ HULTON-DEUTSCHCOLLECTION-CORBIS/GETTY IMAGES

偽りの自己責任論とネガティブな論調は、お金の話が今も女性にとっては社会的なタブーであり、恥ずべきこととされていることを表している。

例えば女性が男の配偶者よりも多く稼いでいると、その人は男をダメにしていると非難される。だからこうしたカップルの場合、男も女も自分の収入について嘘をつきやすい(男性は多めに言い、女性は少なめに言う)。そして結局は離婚に至る可能性が高い。

そんな事情だから、昨年のメリルリンチの調査によれば、女性はお金の話をしたがらず、それくらいなら「終活」の話をしようと考えてしまう。

お金の話も強気の交渉も女には「ふさわしくない」と考えさせられてきたから、まともな賃上げ交渉などできるわけがない。女性政策研究所のデータによれば、実際のところ、ほとんどの女性は賃上げの要求をしていない。だから男女の賃金格差は縮まらない。このままだと同一賃金の実現は40年後の2059年(ただし黒人女性では100年後の2119年、ヒスパニック女性では2224年)とされる。

こうした稼ぎの違いは多方面に深刻な影響を及ぼす。セクハラを含め、たいていの性犯罪者は自分よりも稼ぎの少ない女性を餌食にしている。

自分の稼ぎではどうせ子育ての費用を賄えないからと仕事を辞める女性。資金が調達できずに起業を諦める女性(女性の起業家が調達している資金は全体のわずか2%)。夫に先立たれると経済的に自立できない女性。こういう人たちの逸失利益も計り知れない。

娘たちともっとお金の話を

女性政治家への献金額が相対的に少ないことも、女性の政界進出を阻む要因の1つになっている。ただし「民意を反映する政治センター」によれば、この2年で女性からの献金が劇的に増えている。そうであれば流れは変わるかもしれない。

はっきり言って、状況を打開する特効薬はない。しかし私たちにできることはある。

例えば家庭で、息子にも娘にも同じように、お金の話をすること。母親が家計を管理し、投資の決定をする様子を娘に見せるのもいいだろう。

私は娘にも息子にも、よくお金の話をした。それもかなり具体的に。昇給や減俸が家族に及ぼす影響も話した。自分が転職や昇進、起業で「汗をかく」姿も見せてきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中