最新記事

中国電脳攻撃

中国、SNS総動員で香港デモ批判を世界に拡散 効果について疑問の声も

2019年8月28日(水)08時45分

もっとも、中国政府がどこに向けてこのキャンペーンを展開しているのか、果たして効果は出ているのかは分からない、と専門家は話す。

米サイバーセキュリティー対策を手がけるファイアアイ社の情報アナリスト、リー・フォスター氏は、ツイッターやFBにおける偽アカウントを駆使したキャンペーンは「今一つあか抜けない」と指摘。4─5年前にロシアが手掛けた偽アカウントによる宣伝工作とはあまりにも差があると付け加えた。

香港大学ジャーナリズム・メディア研究センターのキン・ワ・フー准教授は、このキャンペーンが香港の域内に与える影響力は非常に小さいのではないかとの見方を示した上で「香港では地元メディアのコンテンツを使う人が多い」と語った。

中国メディアもこぞって批判

EXOの中国人メンバーであるチャン・イーシンさんは先週、他の中国人セレブに追随する形で、香港警察と中国領土の主権を支持すると表明した。

熱烈なファンのワンさんは、ネットの親衛隊仲間とともに香港デモ批判を投稿し始めた理由として、「大好きなお兄さん(チャンさん)が中国をこれほど愛している以上、私たちファンも彼を応援しなければいけない。だから私はインスタグラムに『香港は中国の一部』、『暴力拒否』、『香港警察は最高!』などのメッセージを書き込んだ」とロイターに説明した。

中国のインターネット検索最大手、百度(バイドゥ)が提供する掲示板の「バイドゥティエバ」では、3130万人の会員に対して、香港デモを批判する投稿やスローガンで海外のソーシャルメディアをあふれさせようという提案が相次いでいる。

中国国営テレビのCCTVは18日、国内屈指の視聴率を誇る夜のニュース番組で、ネットのこうした動きを報道。ニュースキャスターは「このところアイドルファンの女性からバイドゥティエバ、ネット市民、海外の学生まで香港と中国を愛するあらゆる人たちが、香港を守るために一致団結している」と伝えた。

また国営の英語チャンネルCGTNや新華社、共産党機関紙の人民日報は、ツイッターやFBで活発に香港デモを批判したり、中国政府の見解を表明している。

CGTNは21日、「逃げ隠れしなければならないのは、良いことではなく悪いことだからだ」とツイートし、懲罰を避けるため身元を隠したいのだと語る説明文を付けて、マスクで顔を覆うデモ参加者たちの動画を流した。

Brenda Goh

[上海 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



ニューズウィーク日本版 世界が尊敬する日本のCEO
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月1日号(6月24日発売)は「世界が尊敬する日本のCEO」特集。不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者……その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、中東情勢を楽観 ユーロは2

ワールド

イラン核施設攻撃「中核部分破壊されず」と米情報機関

ビジネス

FRBバー理事、関税による持続的インフレを警戒 利

ビジネス

米住宅価格指数、4月は前月比‐0.4% 22年8月
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 3
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり得ない!」と投稿された写真にSNSで怒り爆発
  • 4
    細道しか歩かない...10歳ダックスの「こだわり散歩」…
  • 5
    都議選千代田区選挙区を制した「ユーチューバー」佐…
  • 6
    「子どもが花嫁にされそうに...」ディズニーランド・…
  • 7
    イスラエル・イラン紛争はロシアの影響力凋落の第一…
  • 8
    「温暖化だけじゃない」 スイス・ブラッテン村を破壊し…
  • 9
    「水面付近に大群」「1匹でもパニックなのに...」カ…
  • 10
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 6
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 7
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 8
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 9
    「アメリカにディズニー旅行」は夢のまた夢?...ディ…
  • 10
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中