最新記事

中国電脳攻撃

中国、SNS総動員で香港デモ批判を世界に拡散 効果について疑問の声も

2019年8月28日(水)08時45分

中国がSNSやメディアを使い、香港のデモに対する批判を世界に拡散させようとしている。写真は香港の地下鉄構内に集まったデモ参加者。8月21日、元朗地区で撮影(2019年 ロイター/Thomas Peter)

上海に住む17歳の高校生ワン・インさんはこの4年、韓国の人気男性歌手グループ「EXO」の中国人メンバーを熱烈に応援してきた。そして最近、このメンバーの影響で、香港の抗議デモに反対する中国の立場を支持する「愛国者」を自任するようになった。

ここ数週間、ワンさんのような中国市民がインスタグラムやツイッターといった西側のソーシャルメディアに殺到し、「逃亡犯条例」改正をきっかけに始まった香港のデモに批判を浴びせてきた。

中国の視点から見た香港の状況を、海外に広く知らしめようという共産党政府の積極的な宣伝工作の一環で、国有メディアと中国の有名人、当局からお墨付きをもらった国内のネットユーザーが一体となって進めている。

ロシアに比べてあか抜けない

香港のデモの様子が中国国内で報道されたり、抗議活動の映像が流れることは、少し前までほとんどなかった。しかし、今では連日ニュースの主役の座を占め、ミニブログの「微博(ウェイボ)」では、最も多く閲覧された話題になるなど、状況は一変している。そこでは中国市民に対し、「香港に抗議しよう」と呼び掛けが行われている。

国有メディアは、香港の抗議活動を西側勢力や過激派に操られた「テロリスト」の仕業とみなすような記事や映像を、国内外にこれでもかと配信。ツイッターやフェイスブック(FB)などに香港デモを批判する有料広告を出した。

こうした政治宣伝についてツイッターやFBは20日、中国政府が使っていた大量の偽アカウントを閉鎖したと明らかにした。

中国本土では通常、ネットの使用が厳しく管理されている。ところがきわめて異例の措置として、香港デモを批判する場合は海外にもメッセージを拡散することを許されているもようだ。

オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)で中国のソーシャルメディアを研究するファーガス・ライアン氏は、「極めて愛国的な人々のみが自由な書き込みを許されており、コンテンツは検閲されない」と指摘。彼らは(デモを批判する)キャンペーンを実行し、オンラインを組織化できる。それが中国のネット規制システムの中で起こり、より幅広いネット世界に拡散している」と述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

仏サノフィの高コレステロール薬、在庫不足で中国供給

ビジネス

午前の日経平均は続伸、連日の最高値で4万3000円

ビジネス

世界のEV・PHV販売、7月は中国減速で21%増に

ワールド

独メルツ政権発足100日、与党支持率が2位へ転落=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が教える「長女症候群」からの抜け出し方
  • 2
    【クイズ】アメリカで最も「盗まれた車種」が判明...気になる1位は?
  • 3
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段の前に立つ女性が取った「驚きの行動」にSNSでは称賛の嵐
  • 4
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 5
    【徹底解説】エプスタイン事件とは何なのか?...トラ…
  • 6
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 7
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 8
    「古い火力発電所をデータセンターに転換」構想がWin…
  • 9
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 10
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 1
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 2
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの母子に遭遇したハイカーが見せた「完璧な対応」映像にネット騒然
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 5
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 7
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 8
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 9
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 10
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中