最新記事

米中貿易戦争

第4弾対中関税制裁と為替操作国認定に対する中国の反応

2019年8月8日(木)16時20分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

米財務省が中国を「為替操作国」に認定(写真は6月、大阪G20サミットで行われた米中首脳会談) Kevin Lamarque-REUTERS

G20大阪サミットでの雪解けムードから一転し、8月1日、アメリカは突如第4弾の対中追加関税制裁を9月1日から発動すると宣言。8月5日には中国を為替操作国と認定するとした。この急変に対する中国の対応を考察する。

突然の変化

6月29日のG20大阪サミットにおける米中首脳会談の約束を守るべく、7月31日に第12回の米中貿易協議を上海で終えたその日、ホワイトハウスは「協議は非常に建設的だった」と前向きの評価を発表した。

ところが翌8月1日、トランプは突如、協議は満足なものではなかったとして「中国からの輸入品3000億ドル(約32兆円)相当に10%の制裁関税を課す」と宣言。ほぼ全ての中国製品に追加関税を課す第4弾の対中制裁を9月1日から発動するという。これは大阪サミットにおける米中首脳間の約束に違反するとして、中国は激しく抗議したが、トランプの対中攻撃は、それだけでは終わらなかった。

実は8月1日のトランプ発言が中国の全てのメディアで大きく取り上げられると、米中貿易戦争がさらに激化するという動揺が中国内で広がり、人民元の対ドル相場が8月5日、1ドル7元台に下落したのだ。それは11年ぶりのことだった。

するとすかさずトランプは中国を「為替操作国だ」とツイート。8月5日、アメリカの財務省は中国を為替操作国に認定したと発表したのである。

それに対して中国がどのような反応を起こしたのか、順を追って一つ一つを詳細に見てみよう。

第4弾対中追加関税制裁に対する中国の反応

8月1日、トランプ大統領はツイッターで「中国は米農産物を大量に購入することに最近同意したが、そうはしなかった」と発信し、中国がG20大阪サミットにおける米中首脳会談での「約束を果たしていない」と強調した。

それを受けて、発展改革委員会や商務部は「中国は約束通り、どれだけ多くのアメリカ産農産物や畜産物を仕入れているか知れない。現に数百万トンのアメリカ産大豆が今現在船便で太平洋上を運航中だし、さらに13万トンの大豆、12万トンの高粱(コウリャン)あるいは4万トンの豚肉やその製品を買い付けている最中ではないか!」と強く反論した。中央テレビ局CCTVをはじめ、中国の全てのメディアがトランプを激しく非難し、「報復措置で応じる」とも伝えた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮の金与正氏、日米韓の軍事訓練けん制 対抗措置

ワールド

ネパール、暫定首相にカルキ元最高裁長官 来年3月総

ワールド

ルイジアナ州に州兵1000人派遣か、国防総省が計画

ワールド

中国軍、南シナ海巡りフィリピンけん制 日米比が合同
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 6
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で最も「火山が多い国」はどこ?
  • 9
    村上春樹は「どの作品」から読むのが正解? 最初の1…
  • 10
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 8
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中