最新記事

米中貿易戦争

第4弾対中関税制裁と為替操作国認定に対する中国の反応

2019年8月8日(木)16時20分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

たとえば外交部の華春瑩(か・しゅんえい)報道官は定例記者会見で、「中国は強い不満と断固たる反対を示す。米国が関税措置を実行するなら、中国は自国と国民の根本的な利益を断固として守るために必要な報復措置を取らざるを得ない」と述べた。そして米中貿易摩擦が始まって以来、常套句となっているような「中国政府は貿易戦争を望んでいないが、全く恐れていないし、必要ならば断固として戦う」と繰り返した。

ネットでも「せっかく一休みしたかと思ったのに、トランプは何を取り乱しているのか」といった声が沸き上がり、「民主主義は本当にいいものなのか。大統領再選を目指すために、世界中をかき乱している。みっともない」という反応もあった。

為替操作国認定に対する中国の反応

8月1日の対中制裁第4弾発動宣言に対して、世界の株式市場に動揺が広がったが、中国においても例外ではない。いや、自国の問題なのだから、最も敏感に反応したと言っていいだろう。

その結果、8月5日に1ドル=7元にまで人民元が下落すると、冒頭に書いたようにトランプは「待ってました」とばかりに「中国を為替操作国と認定する」とツイートし、米財務省が正式に認定を発表したわけだ。

アメリカが中国を為替操作国と最後に認定したのは1994年(5回目)で、8月5日の発表は25年ぶりのこととなる。

CCTVを始め、中国の全てのメディアは、8月1日の時点よりもさらに激しく反応した。ニュースキャスターも怒りを込めて、噛みつくような勢いで解説し、多くの専門家や政府関係者の発言を報道しまくった。

そのような中、商務部は「中国の関連企業は米農産品の新規購入を一時停止する」という通達を出した。「新しく購入するのを一時中止」と宣言したわけだが、「新」の一文字を読み落としたのか、日本の一部メディアは、これを以て「習近平政権内の権力闘争」として報道しているのには驚いた。国家発展改革委員会が、それまでの発表と異なる発表をしたのは、「習近平指導部の内部での意見の対立や混乱を指摘する声もでている」と、日本のそのメディアは書いている。

「指摘する声はどこから?」と言いたい。

記者自身がそう思っているから、適宜「声もでている」などと不特定多数のせいにして、どうしても「権力闘争」へと日本の読者を誘導したいのだろう。

トランプ大統領が、ここまで一秒先が読めないような言動を繰り返せば、それに対応しなければならないため、世界中が混乱するのではないだろうか。

このようなことでは、中国の真実あるいは世界の真相を追いかけることなどできないだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ政権、零細事業者への関税適用免除を否定 大

ビジネス

加藤財務相、為替はベセント米財務長官との間で協議 

ワールド

トランプ米大統領、2日に26年度予算公表=ホワイト

ビジネス

米シティ、ライトハイザー元通商代表をシニアアドバイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中