最新記事

アメリカ社会

今年の大卒は安定第一? それでもジェネレーションZが秘める大きな可能性

GENERATION Z GETS TO WORK

2019年7月25日(木)12時02分
アダム・ピョーレ(ジャーナリスト)

ZSD201907242.jpg

今は好景気だが、学生は巨額のローンを背負って社会人に BRENDAN MCDERMIDーREUTERS


9割がストレスで心身に不調

この安定志向が前の世代との決定的な違いだ。「ミレニアル世代は柔軟な人生を求めた」と言うのは、イギリスの調査会社ユースサイトのタニヤ・マイケルセン。「対してZ世代は確実さと安定を求める。短期・単発の仕事が増えた今の時代は、将来を見通せない。だからリスクを避けたがる」

今年の新卒者にはどんな未来が待ち受けているのか。政治の混乱と格差の拡大に振り回されて心を病んでしまうのか。親世代の大きな夢と経済の縮小や環境破壊といった現実の板挟みで身もだえすることになるのか。それとも逆境をはね返して、とびきり勤勉で優秀な世代に化けるのか。

アリソン・ピサーシック(22)はペンシルベニア州立大学を卒業したばかり。専攻はセキュリティーリスクの分析で、情報工学も学んだ。最初は政治学を専攻して国連で働くつもりだったが、国連の給料では学生ローンを返済できないと気付き、諦めた。

秋からはアクセンチュアへの就職が決まっているが、ローン返済の負担は重い。「寝ても覚めてもローンのことが頭を離れない」と、ピサーシックは言う。「毎月ちゃんと返済しなければいけないのに、今度は都会へ引っ越す費用もかかる。本当に大丈夫? ずっと借金漬けで生きていくのかと思うと、心が折れそうになる」

Z世代は既に心を病んでいる。全米心理学会の昨年の調査によれば、彼らは前例のないノイローゼ世代だ。大学4年生の91%が、鬱や不安などのストレス関連の症状を訴えていた。23歳未満の労働者の約54%は、過去1カ月にストレスのせいで不安を感じたと回答している。全国平均の34%よりもかなり高い数字だ。

実際にストレスのせいで心の問題を抱える人が増えたのか、それとも心の病を語ることがタブーでなくなったせいなのか。恐らくはその両方だ。

ピサーシックのルームメイトの1人も鬱だった。「別のルームメイトも経験していて、二度とあんな状態に戻りたくないと話していた。メンタルヘルスの話をオープンにできるようになったのは確か。みんながやられている。鬱になっても、自分が変だなんて思わない」

大学では、助けを求める学生への対応で医師やカウンセラーが大わらわ。キャリアカウンセラーも忙しい。入学してすぐ相談に来る学生もいると、ジョージア大学キャリア支援センターのスコット・ウィリアムズは言う。

ペンシルベニア州立大学キャリア支援センターのボブ・オーンドーフも、そうした変化に気付いている。彼の大学でも過去2年、相談の予約受け入れがほぼ限界に達しているという。しかも、1年生からの予約が早々とある。不安に駆られた学生たちは、せっせとインターンにも参加する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米CB消費者信頼感、11月は88.7に低下 雇用や

ワールド

ウクライナ首都に無人機・ミサイル攻撃、7人死亡 エ

ビジネス

米ベスト・バイ、通期予想を上方修正 年末商戦堅調で

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平合意「極めて近い」 詳細
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    使っていたら変更を! 「使用頻度の高いパスワード」…
  • 10
    トランプの脅威から祖国を守るため、「環境派」の顔…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中