台湾親中派の影に中国共産党「工作部」 事業支援で再統一の機運上昇狙う
統一に向けた支持強化のために動いている中国の国家機関としては、国務院台湾事務弁公室、中国共産党中央統一戦線工作部などがある。その目標は、台湾内のグループを取り込むことにより台湾を統合し、中国の政治目標に反する海外での運動に対抗する働きかけを行うことだ。
両機関の年次事業報告や議事録などロイターが閲覧した内部文書には、台湾内の親中派団体を軸としたキャンペーンが登場し、「優先的な重点目標」と表現されている。
台湾事務弁公室の上海部門が作成した2016年の事業報告には、台湾内の統一支持派団体・個人に対する支援強化を続け、台湾島内の「独立反対」勢力を補強・強化していくという趣旨の部分がある。
上海に隣接する浙江省では、中央統一戦線工作部の1部門が、2016年の内部報告のなかで、中国本土での経済・文化イベントへの「積極的な招待」を通じて、台湾内のグループとの接触を深めている、と述べている。
中国国内では、名目上でも独立性のある政治団体は数少ないが、その1つである台湾民主自治同盟の議事録によれば、台北に本拠を置く中国統一連盟が2016年4月に中国本土を訪問した際、中国政府高官から、「祖国再統一に向けた偉大な事業を前進させた」として「大きな称賛」を浴びたという。
中国統一戦線工作部と提携関係にある中華海外聯誼会に10月に参加したLin氏は、「いったい世界のどの国が、これほど(中国のように)歓待してくれるだろうか。むしろ統一戦線工作部の働きかけのターゲットになりたいくらいだ。真摯かどうかにかかわらず、少なくとも彼らは気に掛けてくれる」と語る。
ロイターが閲覧した文書からは、こうした団体と中国政府が資金面で繋がっているかどうかは分らなかった。だが、そうした資金提供の可能性が台湾政府の憂慮を深めている。
台湾の安全保障機関に勤務する2人の当局者は、問題の難しさゆえに匿名で取材に応じ、こうした親中派団体は台湾にとって「脅威」であると語った。
台湾のある安全保障関係者は、非公開情報であることを理由に匿名を希望しつつ、CUPPは彼の勤務する機関による監視リストの筆頭にあると話している。CUPPは会員数6万人と規模が大きく、動員能力も高いからだ。
「海峡を挟んで戦争が起きた場合、彼らは大きな不安要因になり、非常に恐ろしい」とこの情報提供者は語った。
中央統一戦線工作部、台湾事務弁公室にコメントを求めたが、どちらからも回答はなかった。