最新記事

メディア

FOXニュースとツイッター、危険なのはどっち?

Twitter’s Damage to America

2019年7月5日(金)18時00分
ブライアン・オット(テキサス工科大学教授)

危険なフェイクニュース拡散に貢献したのはソーシャルメディアだった Shanon Stapleton-REUTERS(FOX NEWS)

<ソーシャルメディアの破壊力は「不寛容とヘイトのネットワーク」と化したFOXニュースとは別次元で社会に有害>

ツイッターはドナルド・トランプ米大統領が嘘とデマを広めるのに日々利用されているが、それでもソーシャルメディアよりFOXニュースのほうが危険だ――ツイッターの共同創業者エバン・ウィリアムズは5月、CNNビジネスのインタビューでそう語った。

「有権者の大多数は、トランプのツイートを読んでもいなければ納得してもいない。彼らがずっと信頼しているのはFOXニュースで、ツイッターよりはるかに強力かつ破壊的だ」

ウィリアムズが主張するFOXニュースの破壊的性格については、同意せずにはいられない。FOXニュースは「不寛容とヘイトのネットワークと化し」、事実上「トランプ政権のための国家支援テレビ」として機能している。

彼らは毎日のように、新たな恥ずべき手法を探し創出する。ロシア疑惑の捜査に当たったロバート・ムラー特別検察官(当時)は民主党の手先だと糾弾し、メキシコは敵国だと騒ぎ立て、白人至上主義者を褒めたたえる。

今やFOXニュースを報道機関と言うのさえお笑い草だ。彼らの番組の大多数はニュースですらない。右派のイデオロギーに彩られた意見、コメント、娯楽を流す番組でしかないのだ。

残念なことにほとんどの視聴者は、この種の番組ときちんとニュースを報じる番組を区別していない。全体的に見て、FOXニュースはプロパガンダと偽情報を流す事業者でしかない。

分断を深めヘイトを拡散

だがウィリアムズの言葉はもっと精査されるべきだろう。特に以下の2点で注意が必要だ。

第1に、ツイッターとFOXニュースは異なる性質の媒体で、ウィリアムズがしたように比較するのは合理的でない。ツイッターはソーシャルメディアのプラットフォームであって、報道機関ではない。FOXニュースはその名のとおり報道機関を自称している。FOXニュースが破壊的な報道機関だからといって、ツイッターがソーシャルメディアとしての責任を放棄していいという言い訳にはならない。

第2に、ツイッターはソーシャルメディアとしての責任を十分に果たしているとはいえない。報道機関とは違い、ツイッターの目的は「表現の自由」と「市民参加」の実現。だからこそツイッターは、市民参加による責任ある自由な表現を推進できているかどうかで評価されるべきだ。その基準でいえば、ツイッターは不合格だろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

GM、通期利益予想引き下げ 関税の影響最大50億ド

ビジネス

米、エアフォースワン暫定機の年内納入希望 L3ハリ

ビジネス

テスラ自動車販売台数、4月も仏・デンマークで大幅減

ワールド

英住宅ローン融資、3月は4年ぶり大幅増 優遇税制の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中