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南アフリカのランド、新興国通貨「売り」一番の標的に 人民元の代替通貨として取引の結果か

2019年6月24日(月)11時00分

投資家が売りの標的とする新興国通貨の一番手に、トルコリラやアルゼンチンペソを差し置いて、南アフリカランドが躍り出てきた。写真はダーバンで、2016年1月撮影(2019年 ロイター/Rogan Ward)

投資家が売りの標的とする新興国通貨の一番手に、トルコリラやアルゼンチンペソを差し置いて、南アフリカランドが躍り出てきた。

南アは2013年以降、新興国の「フラジャイル・ファイブ(脆弱な5カ国)」の1つに数えられ、成長を押し上げるための国営電力会社エスコムの立て直しを含めた諸改革の実行に苦戦し続けている。

しかし足元で特に危険度が増したようだ。

失業率は27%と15年来で最悪の水準となり、第1・四半期の成長率はマイナス.2%と四半期ベースで10年ぶりの大幅な落ち込みを記録した。さらに一部の政治家が準備銀行(中央銀行)の使命の修正を試みたり、最大の貿易相手である中国が米国との貿易摩擦を激化させるといった逆風も吹く。

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのストラテジスト、デービッド・ホーナー氏は「最近、南アには悪いニュースが束になって押し寄せている」と述べ、ランドは新興国通貨で最も売り持ちにされているとみている。

ランドの売り持ち活発化は、主に中国人民元に代替する流動的な通貨として取引されていることが原因だ。ホーナー氏は「中国が南アにとって一番大きな貿易相手国である以上、それは大いなる理がある」と指摘。ランドは、南アの地理的な位置からアジア、欧州、米州の各取引時間を網羅している面も影響しているという。

南アは、大手格付け会社の中でただ1社だけ投資適格級を維持しているムーディーズが今後どう動くかという問題も抱える。

オックスフォード・エコノミクスは、債務危機が起きるリスクが大きい主要新興国のランキングで南アをトルコとアルゼンチンよりも上位に置いており、エコノミストのEvghenia Sleptsova氏はその状況が確実に格下げ圧力になるとの見方を示した。

ムーディーズが年内に南アの格付けをジャンク級に下げるか、少なくとも格下げの可能性を警告するとの観測は強まりつつある。ソシエテ・ジェネラル(ソジェン)は、ムーディーズが11月1日に予定している次の格付け見直し時に、こうした事態が起きると予想する。

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