最新記事

米中貿易戦争

中国「開戦警告」発表:中国の本気度

2019年6月6日(木)18時00分
遠藤誉(筑波大学名誉教授、理学博士)

北京の人民大会堂にはためく五星紅旗 Aly Song-REUTERS

5月29日の人民日報は、中国がこれまで開戦前に使ってきた常套句「勿謂言之不預」(警告しなかったとは言わせない)を発表した。貿易戦であれハイテク戦であれ、中国の本気度を窺わせる。(最後の<注記>をご覧いただきたい。)

人民日報が「勿謂言之不預」(警告しなかったとは言わせない)

5月29日付の中国共産党機関紙「人民日報」が第3面の「国際論壇」のコーナーで、「アメリカは中国の反撃能力を甘く見るな」という見出しで、「勿謂言之不預」という言葉を用いた。リンク先の最初のPDFで、赤線で囲んだ部分を少し拡大してご覧になると、簡体字で書いた「勿謂言之不預」という文字が読み取れるだろう。

これは直訳すれば、「警告しなかったと言うこと勿(なか)れ」だが、平たく言えば「中国が警告しなかったとは言わせない」となる。

中国が本気で戦闘を開始する前に「開戦警告」ときには「開戦宣言」として使われてきた常套句だ。

1962年の中印国境紛争

第一回目の「開戦前の辞」は1962年10月に起きた中印国境紛争である。

1949年10月1日に中華人民共和国(以下、中国)が誕生したころは、中国とインド(ネルー首相当時)は「平和五原則(領土主権の尊重、相互不可侵、内政不干渉、平等互恵、平和共存)」を掲げて兄弟の契りを結んでいたが、1956年にチベット動乱が起き、1959年に拿来・ラマ14世がインドに亡命政府を樹立すると、中印の関係は悪化していった。

そこでインドとパキスタンおよびインドの国境が交差するカシミール地域のアクサイチンにおいて、中印双方が相手が進入したと言い出して小競り合いとなったとき、中国は「勿謂言之不預」という言葉を1962年9月22日付の人民日報に載せた。

リンク先の2番目のPDFがそれだ。

これが第一回目の「開戦前の辞」すなわち「開戦警告」である。

その2ヵ月後に戦闘が始まり、中国人民解放軍の圧勝に終わった。こうしてアクサイチンは今も中国が実効支配し、インドが領有権を主張している。

二回目は中越戦争

二回目は1978年12月25日の人民日報第一面の社説だ。

リンク先の3番目のPDFがそれだ。見出しは「我々の忍耐には限界がある」。

こうして1979年2月17日に、中越戦争の幕が切って落とされた。

この「開戦前の辞」を発布したが最後、中国は必ず「戦争を開始する」のである。

もっとも、この中越戦争で中国は勝てなかった。

敗北したとは言わないが、勝利もしていない。アメリカとの長い戦争(ベトナム戦争)を戦って疲弊しているはずのベトナム軍に勝てなかったのだ。

これが中国人民解放軍の100万人リストラへとつながっていく。

そしてその中に、後にHuaweiを創設する任正非氏がいたわけだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

「平和評議会」設立式典、ガザ超えた関与をトランプ氏

ワールド

中国、トランプ氏の風力発電批判に反論 グリーン化推

ビジネス

英ビーズリー、チューリッヒ保険の買収提案拒否 「著

ワールド

NATO、北極圏の防衛強化へ トランプ氏との合意受
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 2
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレアアース規制で資金が流れ込む3社とは?
  • 3
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている「とてつもなく巨大な」生物...その正体は?
  • 4
    韓国が「モンスター」ミサイルを実戦配備 北朝鮮の…
  • 5
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 6
    ノーベル賞に選ばれなかったからグリーンランドを奪…
  • 7
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 8
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 9
    日本はすでに世界第4位の移民受け入れ国...実は開放…
  • 10
    サーモンとマグロは要注意...輸入魚に潜む「永遠の化…
  • 1
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 2
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 3
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 4
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 5
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 6
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 7
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 8
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 9
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で…
  • 10
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中