最新記事

米外交

トランプ訪英「恥ずかしくて見ていられない」元米大使

Bush-Era Ambassador Says It's 'Embarrassing' to Watch Trump's U.K. Trip

2019年6月5日(水)17時30分
ジェーソン・レモン

イギリスのメイ首相とトランプ米大統領の共同記者会見ではブーイングも(19年6月4日)Stefan Rousseau/REUTERS

<ロンドン市長を「負け犬」と呼び、最大野党党首から面会の申し込みがあったが断った、と侮辱する。もしこんな外国指導者がアメリカにきたら、アメリカ人も大いに不快だろう>

訪英中のドナルド・トランプ米大統領の言動は「恥ずかしくて見ていられない」と、かつてアメリカ大使を務めたニック・バーンズ教授(ハーバード大学ケネディ政治学大学院)は言う。

ジョージ・W・ブッシュ政権時代にNATO米国代表部の大使を務め、その後国務次官(政治問題担当)に就任したバーンズは6月4日、MSNBCの番組に出演。訪英中にイギリスの指導者を攻撃しまくったトランプを批判し、アメリカ訪問中の外国の要人が同じことをしたら、アメリカ人も快く思わないだろうと指摘した。

<参考記事>トランプ、エリザベス女王にまたマナー違反!
<参考記事>新天皇・新皇后の外交デビューは見事な作戦勝ち

トランプの態度は米英関係を損ないかねず、「大統領の公式訪問には、全アメリカ人の代表として尊厳と品位のある振る舞いを期待するが、トランプは期待に応えていない」と、語った。

「トランプは(イスラム系初の)ロンドン市長サディク・カーンを「負け犬」と酷評し、イギリスの最大野党・労働党のジェレミー・コービン党首を批判するが、率直に言って彼の認識はロンドンの現実とはかけ離れている」

「実のところ、アメリカの大統領が同盟国の野党指導者を、野蛮で残忍な政治的中傷で攻撃し、人々の注意を引くところを見るのは恥ずかしい。あんなことをすれば相手国の政府がやりにくくなるだけだ」

反トランプデモは「フェイクニュースだ」というトランプと、実際のデモ


11歳の子供のような反撃

訪米した外国の指導者がもし同じような行動をとったら、トランプはどう思うだろか、とバーンズは問題を提起。「絶対に気に入らないはずだ」と断言した。「だからこそ、大統領は外国で無礼な振る舞いをしてはならないのだ」

トランプは3日、ロンドンに到着する寸前に、ツイッターでカーン市長を「どうしようもない負け犬」と決めつけ、大都市の市長として「ろくな仕事をしていない」と批判した。それより前にカーンも、トランプは「世界に広がる脅威のなかでも最悪の部類」だと論じ、「20世紀のファシスト」にたとえた。

4日にBBCの取材に応じたカーンは、トランプのカーンに対する反撃を「11歳の子供のようだ」と評した。

また4日の記者会見では矛先を労働党のコービン党首に向け、「彼は私と面会したがったが、私は断った」と語った。それより労働党らのライバル政党であるブレグジット党のナイジェル・ファラージと面会する、と言った。

「アメリカ的なものの見方からすると、コービンは否定的なエネルギーの人物だと思う。人は批判するのではなく、正しく行動することに心を向けるべきだと思う」と、トランプは続けた。

コービンはトランプの政策に批判的ではあるが、トランプとの会談を要請したことを認め、いつでも対話する準備はできていると述べた。

トランプ訪英に抗議するイギリス国内のデモについて、トランプは「フェイクニュース」だと主張したが、実際にロンドン各所で大規模な抗議活動が発生している。4日朝のトランプとテリーザ・メイ英首相の記者会見でも開始時にブーイングが起きた。

抗議デモの動画と写真はイギリスおよび国際メディアによって配信され、ソーシャルメディアでも拡散されている。政府の世論調査によると、イギリス人の67%がトランプについて否定的な見方をしており、好意を持っているのはわずか21%だ。

20190611issue_cover200.jpg
※6月11日号(6月4日発売)は「天安門事件30年:変わる中国、消せない記憶」特集。人民解放軍が人民を虐殺した悪夢から30年。アメリカに迫る大国となった中国は、これからどこへ向かうのか。独裁中国を待つ「落とし穴」をレポートする。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

北海ブレント、26年終盤に50ドル前半に下落へ=ゴ

ワールド

カナダ・グースに非公開化提案、評価額約14億ドル=

ワールド

トランプ米政権、洋上風力発電見直しで省庁連携

ワールド

AI企業アンスロピック、著作権侵害巡る米作家の集団
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 3
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪悪感も中毒も断ち切る「2つの習慣」
  • 4
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 5
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 6
    「美しく、恐ろしい...」アメリカを襲った大型ハリケ…
  • 7
    イタリアの「オーバーツーリズム」が止まらない...草…
  • 8
    「ありがとう」は、なぜ便利な日本語なのか?...「言…
  • 9
    【クイズ】1位はアメリカ...稼働中の「原子力発電所…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 3
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 4
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 5
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 6
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 7
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 8
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 9
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 10
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中