最新記事

フィリピン

比ドゥテルテ、産廃ゴミ回収の約束守らぬカナダに激怒? 大使と領事に帰国命令

2019年5月16日(木)20時30分
大塚智彦(PanAsiaNews)

カナダ政府当局にゴミ回収を求めるフィリピンの環境団体 (c) ABS-CBN News / YouTube

<先進国の産業廃棄物やプラスチックゴミが東南アジア各国へ偽装輸出される問題が続くなか、フィリピンのドゥテルテ大統領はカナダから違法輸出されたゴミの回収に強硬姿勢を見せたが──>

フィリピン外務省は16日、前日の15日付けでカナダ駐在のフィリピン大使、領事らを本国に戻るよう「召還」する命令を発したことを明らかにした。

テオロド・ロクシン外相が16日午前にツイッターで明らかにしたもので地元紙「フィリピンスター(電子版)」やネットメディアの「ラップラ--」などが一斉に伝えた。

ツイッターでロクシン外相は「15日の午後12時の深夜(16日午前零時)にカナダ大使と領事にカナダから退去するように通告した。彼らは一両日中にフィリピンに戻ってくる」とツイートした。

外務省によると、カナダから2013〜14年にかけてフィリピンに輸出された貨物コンテナの中に再生不可能な産業廃棄物や単なる家庭ゴミ、電化製品、ビニール袋などのプラスチックゴミが大量に含まれていたことから、カナダ政府に繰り返しコンテナの回収を要請していた。

カナダ政府は交渉の結果、5月1日までに69個に及ぶゴミのコンテナを回収することで基本合意し、フィリピン政府は回収期限を5月15日に設定、通告していた。

ところが15日の期限になってもカナダ側がコンテナの回収に乗り出さなかったことから、大使・領事の召還という厳しい対応に踏み切ったという。

ロクシン外相によると大使、領事以外の外交官は依然としてカナダの在外公館で通常業務に当たっており「外交団は縮小するが外交関係は依然として維持している」と説明している。

カナダ国内には約90万人の出稼ぎフィリピン人がメイドや労働者として働いており、彼らの支援には今回の外交関係縮小措置は影響を及ぼさないとの考えを示した。

ドゥテルテ「宣戦布告」が交渉促進

カナダからのゴミ輸出にはドゥテルテ大統領が厳しい対応を示し、4月23日に早急な対応を関係当局とカナダ政府に要求した。その中でドゥテルテ大統領は「1週間以内にカナダに送り返す」「引き取らないというなら戦争だ」などと"宣戦布告"する事態にまで発展していた。

カナダ政府は当初「民間業者が違法に輸出したものであるが、回収・返送を民間業者に要求する権限は政府にはない」と、冷めた対応に終始していた。

ところがフィリピン国内で「フィリピンはカナダのゴミ捨て場ではない」などと反カナダデモが起きるなど事態が深刻化し、そこへドゥテルテ大統領の"宣戦布告"発言もあり、カナダ政府が本格的に交渉に乗り出し、回収に基本合意。5月1日にロクシン外相は「5月15日までに送還されることになる」と明らかにして、事態の進展を報告するとともに実際の回収着手を見守ってきた。

今、あなたにオススメ

ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏、ウクライナ南東部の前線を訪問 兵士

ビジネス

中国はより質の高い成長へ移行、一定の成長は維持=李

ワールド

ドイツで運輸産業が大規模スト、2大空港も停止 週明

ビジネス

アリババ創業者馬氏が中国へ帰国、李首相の要請との指

今、あなたにオススメ

MAGAZINE

特集:グローバル企業に学ぶSDGs

2023年3月21日/2023年3月28日号(3/14発売)

ダイキン、P&G、AKQA、ドコノミー......。「持続可能な開発目標」の達成を経営に生かす

メールマガジンのご登録はこちらから。

人気ランキング

  • 1

    大丈夫? 見えてない? テイラー・スウィフトのライブ衣装、きわどすぎて観客を心配させる

  • 2

    大事な部分を「羽根」で隠しただけ...米若手女優、ほぼ丸見えドレスに「悪趣味」の声

  • 3

    「見られる価値のない体なんてない」 車椅子に乗った障がい者女性が下着モデルに...批判にも大反論

  • 4

    「次は馬で出撃か?」 戦車不足のロシア、1940年代の…

  • 5

    「カミソリのような鋭い仕立てに定評」──ファッショ…

  • 6

    【デンマーク王室】称号を剥奪された次男ヨアキム王…

  • 7

    ChatGPTは大学教育のレベルを間違いなく高める――「米…

  • 8

    大滝詠一が本当に聴かせたかったのは、この音だった.…

  • 9

    本当にただの父娘関係? 24歳モデルと父親の写真、距…

  • 10

    話題のプーチン「アゴ写真」に重大な誤り...それでも…

  • 1

    大事な部分を「羽根」で隠しただけ...米若手女優、ほぼ丸見えドレスに「悪趣味」の声

  • 2

    女性支援団体Colaboの会計に不正はなし

  • 3

    「この世のものとは...」 シースルードレスだらけの会場で、ひときわ輝いた米歌手シアラ

  • 4

    大丈夫? 見えてない? テイラー・スウィフトのライ…

  • 5

    「ベッドでやれ!」 賑わうビーチで我慢できなくなっ…

  • 6

    プーチンの居場所は、愛人と暮らす森の中の「金ピカ…

  • 7

    復帰した「世界一のモデル」 ノーブラ、Tバック、シ…

  • 8

    「そんなに透けてていいの?」「裸同然?」、シース…

  • 9

    インバウンド再開で日本経済に期待大。だが訪日中国…

  • 10

    プーチン「専用列車」の写真を撮影・投稿してしまっ…

  • 1

    大事な部分を「羽根」で隠しただけ...米若手女優、ほぼ丸見えドレスに「悪趣味」の声

  • 2

    推定「Zカップ」の人工乳房を着けて授業をした高校教師、大揉めの末に休職

  • 3

    訪日韓国人急増、「いくら安くても日本に行かない」との回答も一変......その理由は?

  • 4

    「ベッドでやれ!」 賑わうビーチで我慢できなくなっ…

  • 5

    【写真6枚】屋根裏に「謎の住居」を発見...その中に…

  • 6

    1247万回再生でも利益はたった328円 YouTuberが稼げ…

  • 7

    ざわつくスタバの駐車場、車の周りに人だかり 出て…

  • 8

    年金は何歳から受給するのが正解? 早死にしたら損だ…

  • 9

    プーチンの居場所は、愛人と暮らす森の中の「金ピカ…

  • 10

    【悲惨動画3選】素人ロシア兵の死にざま──とうとう…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story