最新記事

米中衝突の核心企業:ファーウェイの正体

トランプの言うことは正しい

WHEN TRUMP IS RIGHT

2019年5月15日(水)11時40分
フレッド・カプラン(スレート誌コラムニスト)

自己中心的な外交のせいでトランプは世界にそっぽを向かれている PHOTO ILLUSTRATION BY NEWSWEEK JAPAN; IMAGES: LEAH MILLIS-REUTERS (TRUMP), ILLUSTRATION BY BOOKZV-SHUTTERSTOCK (5G)

<米中衝突の大きな要因であるファーウェイ問題。中国政府に不正アクセスのバックドアを提供するファーウェイ製品は、基幹インフラから排除するべきだ>

20190521cover-200.jpg
※5月21日号(5月14日発売)は「米中衝突の核心企業:ファーウェイの正体」特集。軍出身者が作り上げた世界最強の5G通信企業ファーウェイ・テクノロジーズ(華為技術)。アメリカが支配する情報網は中国に乗っ取られるのか。各国が5Gで「中国製造」を拒否できない本当の理由とは――。米中貿易戦争の分析と合わせてお読みください。

◇ ◇ ◇

ドナルド・トランプ米大統領が、珍しく正しいことをしている。次世代通信規格5Gのネットワーク整備事業から、中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)を排除し、同盟国にも同様の措置を取るよう働き掛けているのだ。

だが、各国の反応は鈍い。NATOを罵倒し、イラン核合意から突然離脱を表明するなど、「自己チュー外交」を展開してきたトランプの訴えになど耳を貸せるかと思っているようだ。

もちろん現実問題としての難しさもある。ファーウェイの通信機器は世界170カ国で利用されており、ヨーロッパでも、既にドイツテレコムやBTグループなどの通信大手が開発中のネットワークに組み込まれている。そこからファーウェイ製品を取り除くのは労力的にもコスト的にも高くつく。

しかしファーウェイの通信機器は、中国政府による不正アクセスのバックドア(裏口)となり、そこから政治・金融・製造・軍事上の機密データが盗まれる恐れがある。ファーウェイ幹部は否定するが、これは決して事実無根の言い掛かりではない。実際に2015年、あるドイツ企業がファーウェイ製スマートフォンにマルウエアを発見した。

それにファーウェイ自身の主張は、ほとんど重要ではない。ジョージ・W・ブッシュ米政権でサイバーテロ対策を担当し、現在サイバーセキュリティー関連会社を経営するリチャード・クラークは、「中国企業は、政府の情報(協力)要請に応じることが法律で義務付けられている」と指摘する。ファーウェイの経営幹部は政府から要請があっても断ると言うが、「断ることなどできない」と、クラークは言う。

しかもその脅威は近年大きくなりつつある。中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は、「国有企業だけでなく、民間企業でも共産党の役割を強化している」と、米外交問題評議会アジア研究部長のエリザベス・エコノミーは指摘する。中国に「政府の介入から完全に自由な企業というものは存在しない」。

にもかかわらず、英政府は4月、5Gネットワーク整備事業にファーウェイの参加を一部容認する方針を固めた。英国家サイバーセキュリティーセンター(NCSC)のキアラン・マーティンCEOは2月、たとえセキュリティーリスクが生じたとしても、NCSCが「管理」できると自信を示した。

だが、アメリカの情報機関職員や専門家は疑問視する。サイバーセキュリティー会社ベラコードのクリス・ワイソパル最高技術責任者(CTO)は、「どんなデバイスも、ファームウエアをアップデートすればバックドアを作れる。デバイスを1度チェックしただけでは不十分だ」と言う。

【関連記事】強気の米中、双方に死角あり「アメリカはまずい手を打っている」

ニュース速報

ワールド

トランプ氏の弾劾裁判が審理入り、運営規則案巡り与野

ワールド

米、中国に核兵器交渉への参加要請 ロシア含む三カ国

ワールド

独首相、多国間外交に中国含むべき 「新たな二極体制

ワールド

ロシア大統領、新内閣を承認 主要閣僚横滑り

MAGAZINE

特集:CIAが読み解くイラン危機

2020-1・28号(1/21発売)

40年にわたる対立の起源はどこにあるのか── 元CIA工作員が歴史と戦略の視点から分析

人気ランキング

  • 1

    ゴーン逃亡のレバノンが無政府状態に、銀行も襲撃される

  • 2

    TWICEリーダー、ジヒョの発言で炎上した「웅앵웅」とは? 韓国に広がる男女間ヘイトの炎

  • 3

    ヘンリー王子夫妻「王室離脱」でエリザベス女王にいじめ批判

  • 4

    教育は成功、でも子育ては失敗! 親の仕事は教育で…

  • 5

    英王室に爆弾を放り込んだスーパーセレブ活動家メー…

  • 6

    バグダディを追い詰めた IS被害女性ケーラ・ミュラー…

  • 7

    人種差別と偏見にまみれたイギリスから、ヘンリー王…

  • 8

    世界の富裕層上位2100人が最貧困層46億人より多くの…

  • 9

    ヒトの老化は、34歳、60歳、78歳で急激に進むことが…

  • 10

    2600年前の脳がそのままの状態で保存されていた ....…

  • 1

    ゴーン逃亡のレバノンが無政府状態に、銀行も襲撃される

  • 2

    訪韓日本人数が訪日韓国人数を上回った ......その内実は

  • 3

    英王室に爆弾を放り込んだスーパーセレブ活動家メーガン妃の野心

  • 4

    韓国・文在寅政権──モンスターになってしまったモン…

  • 5

    野生のコヨーテ3匹を猫が撃退! 「クレイジーキャッ…

  • 6

    オーストラリア森林火災、「ウォンバットが野生動物…

  • 7

    年始から「不快感」の応酬......文在寅vsアメリカは…

  • 8

    日本も見習え──台湾はいかにポピュリズムを撃退したか

  • 9

    TWICEリーダー、ジヒョの発言で炎上した「웅앵웅」とは…

  • 10

    韓国でトゥレット障がい者のユーチューバー、「演技…

  • 1

    ゴーン逃亡のレバノンが無政府状態に、銀行も襲撃される

  • 2

    日本不買運動で韓国人が改めて思い知らされること

  • 3

    韓国、長引く不況を「ノージャパン運動」が覆い隠す

  • 4

    韓国の自動車が危ない?

  • 5

    複数の海外メディアが行くべき旅行先として日本をセ…

  • 6

    トランプが52カ所攻撃するなら、イランは300カ所攻撃…

  • 7

    イラン軍司令官を殺しておいて本当の理由を説明しよ…

  • 8

    ヒトの老化は、34歳、60歳、78歳で急激に進むことが…

  • 9

    訪韓日本人数が訪日韓国人数を上回った ......その内…

  • 10

    英王室に爆弾を放り込んだスーパーセレブ活動家メー…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集 資産運用特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
ニューズウィーク日本版試写会ご招待
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2020年1月
  • 2019年12月
  • 2019年11月
  • 2019年10月
  • 2019年9月
  • 2019年8月