最新記事

米中衝突の核心企業:ファーウェイの正体

トランプの言うことは正しい

WHEN TRUMP IS RIGHT

2019年5月15日(水)11時40分
フレッド・カプラン(スレート誌コラムニスト)

ファーウェイ排除に動いている国もある。オーストラリア政府は2012年、保安情報機構(ASIO)の勧告を受け、全国ブロードバンド網(NBN)整備事業へのファーウェイの参加を禁止した。ニュージーランドとカナダ、そして日本も調達手続きからファーウェイを事実上排除している。

ヨーロッパでは、トランプ政権の強引なやり方が、かえって各国の態度を硬化させているようだ。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、リチャード・グレネル駐ドイツ米大使は、ファーウェイを政府事業から排除しなければ、アメリカはドイツとの機密情報共有を停止するとドイツ政府に警告。激怒したアンゲラ・メルケル首相から「ドイツの基準はドイツが決める」と反撃されたという。

トランプがファーウェイを米中貿易戦争の交渉材料にしているとの見方も、同盟国の反応を鈍くしているようだ。実際トランプは、中国が米企業に有利な内容の貿易合意に調印するなら、ファーウェイの米市場復帰を許してもいいと示唆したことがある。

トランプ以外の大統領だったら

ひょっとすると、ヨーロッパ諸国がトランプの呼び掛けに応じないのは、通信機器メーカーが政府にバックドアを提供するのは珍しいことではないという意識があるのかもしれない。米国家安全保障局(NSA)はエドワード・スノーデンに暴露されるまで、アメリカのソフトウエア企業や通信企業のネットワークを利用して、幅広い通信傍受活動をしていた。

ただし、NSAの通信傍受活動は基本的にテロ対策の一環であり、対象者は特別な裁判所の許可を得なければならない。これに対して中国の通信傍受活動は、軍事機密から企業秘密の窃盗まで極めて幅広い範囲をカバーしているとされる。

そもそも現在のような問題が起きた背景には、通信技術がきちんとした監視や基準もなく世界に広まってきた事実がある。米国防総省の防衛科学委員会が2017年に発表した報告書は、サイバーのサプライチェーンに脆弱性があるため、兵器システムや金融ネットワーク、重要インフラが混乱・破壊される可能性があると警告している。

この報告書は、グーグルや携帯電話会社クアルコム、IBM、ジョンズ・ホプキンズ大学応用物理学研究所など産学官の専門家パネルが1年間検討した結果をまとめたもので、「マルウエアが埋め込まれていても、作動されるまで検知されない」可能性を指摘。見つかったとしても「設計上の欠陥」と見なされる恐れがあると指摘している。

【参考記事】米中5G戦争ファーウェイの逆襲 米政府提訴「成功する可能性ある」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン最高指導者ハメネイ師、攻撃後初めて公の場に 

ワールド

ダライ・ラマ「130歳以上生きたい」、90歳誕生日

ワールド

米テキサス州洪水の死者43人に、子ども15人犠牲 

ワールド

マスク氏、「アメリカ党」結成と投稿 中間選挙にらみ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚人コーチ」が説く、正しい筋肉の鍛え方とは?【スクワット編】
  • 4
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 10
    反省の色なし...ライブ中に女性客が乱入、演奏中止に…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中