最新記事

ADHD

天才ダ・ヴィンチはADHDだった!?

2019年5月28日(火)16時50分
松丸さとみ

「ダ・ヴィンチの分析が、ADHDへの偏見をなくす手助けになってくれれば......」 Myper -iStock

<英ロンドン大学の研究者は、ダ・ヴィンチがADHDだったのではないかと主張。そしてこの分析が、ADHDへの偏見をなくす手助けになってくれれば、と語っている>

作品をなかなか完成できなかったダ・ヴィンチ

レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452~1519)は、ルネサンス期に芸術や自然科学の分野で活躍した天才と言われている。しかしそのダ・ヴィンチが、もし今の時代に生きていたら注意欠陥多動性障害(ADHD)と診断されていた可能性が高い、とある研究者は考えている。

ダ・ヴィンチがADHDだったのではないかと主張するのは、ADHDや自閉症のような神経発達疾患の治療の専門家、英ロンドン大学キングス・カレッジのマルコ・カターニ教授と、イタリアにあるパヴィア大学のパオロ・マザレロ教授だ。2人の論文は、オックスフォード大学出版局から5月23日に発行された医学誌「ブレイン:ジャーナル・オブ・ニューロロジー」(脳:神経学ジャーナル、以下「ブレイン」)に掲載されている。

「ブレイン」でカターニ教授らは、ダ・ヴィンチが「解剖学、自然哲学、芸術の謎を理解するほど偉大な知性を持ちながら、完成できなかったプロジェクトがかなりあった」と指摘する。このように慢性的にものごとを先延ばしにするところや、芸術や科学の分野でクリエイティブな意欲を発揮していたところは、ダ・ヴィンチがADHDだったと考えれば説明がつく、と教授らは考えている。

ディスレクシア(失読症)であった可能性も高い

カターニ教授らはまた、ダ・ヴィンチが残したノートにはスペルミスや鏡文字が見られたことから、ダ・ヴィンチがディスレクシア(失読症)であった可能性も高いと考えている。ダ・ヴィンチは左利きだったが、左利きやディスレクシアは、ADHDのような神経発達に疾患がある子どもによく見られる特徴だという。

本誌英語版によるとカターニ教授は、「500年前に亡くなった人に診断を下すのは不可能ではあるが、レオナルドが作品を完成できなかった説明として、ADHDが最も説得力があり科学的に妥当な仮説であると私は確信している」と話している。

教授らは「ブレイン」で、ダ・ヴィンチがいかに何かを完成させるのが苦手だったか例を挙げて説明。例えば1478年1月10日、独立した画家として初めて請け負った仕事(チャペルに掲げる大型の祭壇画の作成)では、前払金として25フロリンを受け取ったが、結局完成させられなかった。

代表作の1つでもある「最後の晩餐」は3年かけて1498年に完成させたが、制作中、依頼主のミラノ公に仕上がりの遅さを問い詰められたダ・ヴィンチは、機転を利かせて「イエスとユダのモデルが見つからないから」と言い訳したと「ブレイン」は説明している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P小幅続伸、貿易・経済指標を注視

ワールド

イスラエル、レバノン国連軍拠点を攻撃 ヒズボラとの

ワールド

再送ウクライナとの直接協議、プーチン氏欠席か トラ

ワールド

米国の薬物過剰摂取死、24年は27%減 5年ぶり低
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    加齢による「筋肉量の減少」をどう防ぐのか?...最新研究が示す運動との相乗効果
  • 2
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 3
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因は農薬と地下水か?【最新研究】
  • 4
    トランプ「薬価引き下げ」大統領令でも、なぜか製薬…
  • 5
    iPhone泥棒から届いた「Apple風SMS」...見抜いた被害…
  • 6
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 7
    サメによる「攻撃」増加の原因は「インフルエンサー…
  • 8
    終始カメラを避ける「謎ムーブ」...24歳年下恋人とメ…
  • 9
    対中関税引き下げに騙されるな...能無しトランプの場…
  • 10
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    加齢による「筋肉量の減少」をどう防ぐのか?...最新研究が示す運動との相乗効果
  • 3
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 4
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因…
  • 5
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 6
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 7
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 8
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 9
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 10
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 6
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 10
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中