最新記事

スペースX

列車のように移動する低軌道小型通信衛星「スターリンク」56基が撮影される

2019年5月29日(水)18時15分
松岡由希子

オランダで撮影された「スターリンク」 VideoFromSpace-Youtube

<民間宇宙企業のスペースXは、低軌道小型通信衛星「スターリンク」60基を打ち上げ、数珠つなぎに一列で並んで欧州北西部の上空を移動する様子が撮影された>

アメリカの実業家イーロン・マスクが率いる民間宇宙企業のスペースXは、2019年5月23日午後10時30分(アメリカ東部標準時)、低軌道小型通信衛星「スターリンク」60基を米フロリダ州ケープカナベラル空軍基地から打ち上げた。これら60基の「スターリンク」は、打ち上げから1時間2分後に高度440キロメートルに配備され、さらに高度550キロメートルまで達している。

Starlink Mission-Space X

5月24日午後11時頃(グリニッジ標準時)には、数珠つなぎに一列で並んで欧州北西部の上空を移動する「スターリンク」がとらえられている。オランダ南西部のライデンでは、天文学者のマルコ・ランブルック博士が「スターリンク」の軌道情報をもとに通過時刻を計算し、キヤノンのカメラレンズ「FD 1.8/50 mm」を装着した微弱光監視カメラで待ち構えたところ、少なくとも56基の「スターリンク」が上空を通過する様子を撮影することに成功した。

1万2000基の小型通信衛星を低軌道に送り込む計画

オランダのUFO情報投稿サイト「UFO Meldpunt Nederland」でも「星の列車のような奇妙な光が一定の速度で上空を移動していた」などといった目撃情報が150件以上寄せられている。

SpaceX Starlink Satellites Spotted Over Netherlands

スペースXでは、安価で信頼性の高いブロードバンドインターネット接続サービスをグローバル規模で展開するべく、1万2000基の小型通信衛星を高度2000キロメートル以下の低軌道に送り込んで次世代型衛星ネットワークを構築する計画を2015年からすすめている。

2020年に最大720基

今回打ち上げられた60基は大規模な打ち上げとしては初のもので、スペースXは、公式ツイッターアカウントで「2019年末までにさらに6基を打ち上げ、2020年には最大720基を軌道に送り込む」との方針を明らかにしている。

低軌道通信衛星によるブロードバンドインターネット接続サービスの構築に取り組むのはスペースXのみにとどまらない。ソフトバンクが出資したことでも知られるスタートアップ企業のワンウェブやカナダの衛星通信事業者テレサットが同様の目的で低軌道に通信衛星を送り込む計画をすすめているほか、アマゾン・ドットコムでは3236基の通信衛星を高度590キロメートルから630キロメートルまでの軌道に配備する計画があると報じられている

「裸眼で見える星よりも衛星のほうが多くなってしまう」

上空に多数の衛星が配備されることに懸念を示す声も少なくない。米国の天文学者アレックス・パーカー博士は、公式ツイッターアカウントで「星の列車のような『スターリンク』に人々が興奮することは理解できるが、僕はためらってしまう。もしスペースXが1万2000基をすべて打ち上げたら、裸眼で見える星よりも衛星のほうが多くなってしまう」とコメントしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングロ、株主から企業価値向上圧力 BHPの買収提

ビジネス

米ウィーワーク、再建計画巡り債権者と和解 創業者の

ワールド

米軍のガザ浮桟橋建設費、推計3.2億ドルに倍増

ビジネス

日銀が利上げなら「かなり深刻」な景気後退=元IMF
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「瞬時に痛みが走った...」ヨガ中に猛毒ヘビに襲われ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 10

    ナワリヌイ暗殺は「プーチンの命令ではなかった」米…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    「誰かが嘘をついている」――米メディアは大谷翔平の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中